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カーブ・アウトをキッカケに,2010年には約1兆円の市場創出が可能になると試算する
カーブ・アウトをキッカケに,2010年には約1兆円の市場創出が可能になると試算する
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カーブ・アウトは,ディスプレイ市場で最も効果があるとする
カーブ・アウトは,ディスプレイ市場で最も効果があるとする
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同一社内に競合技術が存在すると,新規事業の成長を阻害する。カーブ・アウトによって,この問題が解消できるとする
同一社内に競合技術が存在すると,新規事業の成長を阻害する。カーブ・アウトによって,この問題が解消できるとする
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 「カーブ・アウト」が,海外勢にシェアを奪われつつある日本の電子部品産業の国際競争力向上や新たな市場の創出を実現する——。野村総合研究所(野村総研)は,情報通信産業や関連産業についての将来予測を発表するセミナー「ITアウトルック2010(第3回)」でこのような見解を示した。同社の試算によれば,カーブ・アウトをキッカケにした電子部品産業の市場創出効果は,2010年に約1兆円に達するという。カーブ・アウトは,技術的な競争力を持つものの,企業の中で非重点事業と位置付けられた事業部門を切り出して子会社を作り,親会社や第3者の支援によって事業化(株式公開)を目指す手法である。一般に,株式公開後は親会社の連結対象にする。

新規デバイス事業の位置付け向上の手段に

 カーブ・アウトの効果として,野村総研は以下の3点を挙げる。すなわち,(1)企業内の事業ポートフォリオの制約から抜け出し,技術の事業化を加速できる,(2)ほかのパートナーとの提携が容易になり,市場創出活動が加速する,(3)複数の外部資本を入れることで,大きな資本投下が可能になるとともにリスク低減を図れる,の3つである。これらの効果は,日本の電子部品業界が現在抱えている課題の解消に有効であると分析する。

 例えば,(1)が有効といえる理由を野村総研は次のように説明する。日本に多い総合電機メーカーは,デジタル家電のような収益性の高い事業と,新しい電子デバイス開発など当面の収益にはつながらず,しかも大きな投資が必要となる事業を同時に抱えている。その場合,当面の収益を重視すると,どうしても事業全体の中で後者の位置付けが低くなる傾向にある。このため,新しい市場を創出するようなデバイスをなかなか生み出せない状況に陥りやすい。カーブ・アウトにより当面の収益性を重視する事業と新規事業を切り離すことで,技術の事業化を迅速に行うことができる。

ディスプレイ産業に効果大

 野村総研は,カーブ・アウトの効果が最も顕著に現れるのが,ディスプレイ市場であるとした。2010年に約1兆円に達するという新市場の5割以上にディスプレイ技術が寄与すると見積もる。ディスプレイ市場は,1つの企業が複数の技術を保有している例が多く,しかも今後それらが市場で競合する技術となる可能性が高いためである。特にカーブ・アウトの効果を期待できる技術として,同社は有機ELパネルと画素型リアプロを例に挙げた。

 有機ELパネルが目指す用途の1つが,携帯機器向けなどの小型ディスプレイ分野である。現在この市場を確保している低温多結晶Si TFT液晶パネルに対して,有機ELパネルがカーブ・アウトをキッカケに創出できる市場規模は,2010年に3038億円になると試算する。既存技術の置き換えと新規開拓による市場規模から,カーブ・アウトがない場合の想定市場規模を差し引いて試算したものである。同じく,大型ディスプレイ分野において,PDPに対して画素型リアプロがカーブ・アウトによって創出できる市場規模は2010年に1360億円になるという。

 野村総研の分析に従えば,東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)などは,今後,カーブ・アウトによって事業を拡大できる可能性があるといえそうだ。同社は,有機ELパネル技術を保有しながら低温多結晶Si TFT液晶パネル事業を主力としており,カーブ・アウトによって有機ELパネル事業を機動的に展開できる可能性が高いからだ。