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図1 日本AMD 取締役の吉沢俊介氏
図1 日本AMD 取締役の吉沢俊介氏
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 日本AMDは2005年6月30日,米Intel Corp.の日本法人であるインテルを相手取り,損害賠償を請求する訴訟を東京高等裁判所と東京地方裁判所でそれぞれ起こした(発表資料)。この訴訟は,日本AMDの親会社である米Advanced Micro Devices,Inc.(AMD社)が,Intel社とインテルを相手取って2005年6月28日に米国で起こした訴訟に関連するもの(Tech-On!関連記事)。パソコン向けマイクロプロセサ市場において圧倒的なシェアを誇るIntel社が「世界的規模で独占的な地位を利用し,マイクロプロセサの製品競争を阻害した」(日本AMD 取締役の吉沢俊介氏)と主張する。裁判を通して「公正で自由な競争原理を回復すると共に,自由な競争によって技術革新を促進させる」(同氏)ことを実現したいという。同社によれば,2002年にはパソコン向けマイクロプロセサの日本市場でAMD製品が25%のシェアを握っていたが,インテルの阻害によって現在は10%以下にまで低下したと主張する。現在のシェアは,AMD社が米国市場で持つ15%~20%のシェアの半分以下という。利益率にも大きな開きがあり,Intel社は2004年に利益率が41%であるのに対し,「AMD社の利益率は数%。しかも1ケタ台の低い方」(吉沢氏)とする。今回の提訴を受けインテルは「現段階では詳細を把握していないので,コメントを差し控える」(同社の広報室)という。

 東京高等裁判所で提起した訴訟は,2005年3月8日に公正取引委員会がインテルに対して出した排除勧告をインテルが「応諾する姿勢を示した」(日本AMDの発表資料)ことを受けたもの。インテルがNECや富士通,東芝,ソニー,日立製作所に対して,AMD社製のマイクロプロセサを購入しないように働きかけ,これらパソコン・メーカーと日本AMDの取引を阻害したと主張する。訴訟では,インテルに対して5000万米ドルを請求する。日本の法体系では公正取引委員会が排除勧告を下しても,排除勧告を受けた側に制裁金は課せられない。日本AMDはこのような状況を見過ごせないと考え,「Intel社にとって唯一のライバル・メーカーであるAMD社が立ち上がった」(日本AMDの吉沢氏)とする。

 東京地方裁判所での訴訟は,公正取引委員会の排除勧告で認定された違反行為による損害と,これらの違反行為以外に日本AMDがインテルから被った取引妨害や営業妨害に関する損害を合わせた賠償を請求するもの。請求額は5500万米ドルである。日本AMDによれば取引妨害や営業妨害として,インテルは国内パソコン・メーカーに対してAMD社製マイクロプロセサを搭載する製品をカタログから排除するように指示したり, AMD社製マイクロプロセサの新製品発表会に参加を予定していた顧客に圧力をかけて参加を辞退させたりしたという。

技術力で優位性を発揮できる今だから


 なぜ今,AMDが提訴に踏み切ったか。その理由として日本AMD取締役の吉沢俊介氏は,「技術力でIntelを上回っている今の状況だからこそ,公正な競争環境になれば,われわれのマイクロプロセサが市場で選ばれると言うことができる」とコメントした。AMDが技術力で優位であることの根拠として,(1)SOI(silicon on insulator)プロセスの採用,(2)クロック周波数に頼らずに性能を上げられるアーキテクチャ,(3)デュアル・コアで先行,を挙げた。特にSOIとCu配線を組み合わせたプロセスは「高性能化と発熱のトレードオフの壁を打破できるIntel社が持たない技術」(吉沢氏)と強調した。