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 松下電器産業 技監 デバイス・環境技術担当の竹永睦生氏は7月5日,日経マイクロデバイス20周年記念セミナーで「先端デバイスが拓くユビキタス・ネットワーク」と題して講演した。「20世紀が無機材料を使ったハードエレクトロニクスの時代であったのに対し,21世紀は有機材料を使ったソフトエレクトロニクスの時代になる」「ナノテクノロジーがデバイスに大変革をもたらす」などと将来技術を展望した。

 ソフトエレクトロニクス化の典型として同氏が挙げたのが,薄膜トランジスタ(TFT)である。現在フラットパネルディスプレイ向けTFTとしてはアモルファスシリコンTFTと低温ポリシリコンTFTが実用化しているが,今後注目されるのはより低温で形成可能な有機TFTだという。有機TFTの電子移動度はアモルファスシリコンTFTを超えるレベルまで達してきた。加えて,基板にガラスではなく,プラスチックを使って紙のように柔軟性があって安価な新しいディスプレイが誕生する可能性がある。

 さらに将来のTFTを展望したときに同氏が特に注目するのが,カーボンナノチューブとシリコンナノワイヤなどのナノテクノロジーを使った新素材(ナノ電子材料)である。アモルファスシリコンに比べて電子移動度が高い点がユニークだという。特に,カーボンナノチューブを使った材料を塗布したTFTはアモルファスシリコンTFTの10倍の電子移動度を達成したという成果も報告されている。同氏は,現状の有機TFTの未来形の材料としてナノ電子材料を位置付ける。

 ストレージ分野でも「ナノテクノロジーがパラダイムの転換を目指す革命的手法になる可能性がある」とする。研究例として同氏は,「フェリチン」と呼ぶ鉄原子を内包した有機分子の例を挙げた。フェリチンはシリコン単結晶上で自己組織的に整列する特徴がある。基板上にフェリチンを並べた後に有機分子を加熱などによって取り除けば,ナノオーダーで配列した鉄ドットが残ることになる。この鉄ドットを磁気記録材料として使えば,5Tビット/in2の超々高記録密度の磁気記録材料となる可能性があるという。

 竹永氏の歴史観によると,現代社会が享受している技術は,1940~1950年代に発明・開発された材料を使っており,その応用技術にすぎないという。それらの材料を使っている限り,さまざまな分野で限界が見えてきたのが最近の状況である。ここ数年で登場したナノテクノロジーをはじめとする新たな電子材料を生み出そうという動きは,新たな時代を作るものだ,と同氏は見る。