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 DRAMやフラッシュEEPROMなどの半導体メモリを取り巻く環境は,めまぐるしく変化している。2005年5月から6月にかけて連載し,好評をいただいた短期集中連載「キクタマのメモリ市場分析」から3カ月が経った。その間に半導体メモリやその応用機器市場は様変わりした。今日から約3週間(10回)にわたり,大きく変わった点に着目しながら第2弾をお届けしたい。

Appleは2005年の計画を上方修正

 2005年6月に米Apple Computer, Inc.がNAND型フラッシュEEPROMの購入量を大幅に落とした。その時点では,同社の携帯型デジタル音楽プレーヤ*1(以下,デジタル・オーディオ)「iPod shuffle」の生産計画が大き過ぎて,その部品であるフラッシュEEPROMの調達量に下方修正が入ったと見る業界関係者が多かった。そして,デジタル・オーディオは生産過剰から投げ売りが始まり,他の電子機器と同様に価格競争からメーカー淘汰の道へと進むのかと思われた。

*1 音楽データの記録媒体としてフラッシュEEPROMまたはハード・ディスク装置を使う携帯型音楽プレーヤ。記録媒体は内蔵するタイプとメモリ・カードを挿入するタイプの両方を含む。

 しかしその後,同社が提示した2005年後半のデジタル・オーディオの生産計画は,大方の予想を覆して年初の計画を約1.5倍に引き上げたものだった。調整はあくまで一時的なものに過ぎなかったようだ。実際,同社が調達を再開した2005年7月にNAND型フラッシュEEPROMの価格下落は止まり,その後も需給タイトが続いている。

メーカーの計画通りなら30%以上の供給過剰に

 Apple社の2005年のデジタル・オーディオの生産計画は,2004年の約4倍に当たる3400万台だ。四半期ごとの業績発表でも販売台数の勢いは全く衰えていない(Tech-On!関連記事)。2005年上半期だけですでに2004年通年の販売台数を上回る約1100万台を販売した。

 一方,Reigncom Ltd.やSamsung Electronics Co.,Ltd.など韓国のデジタル・オーディオ・メーカーは,各社とも2005年の生産台数を2004年のほぼ倍にする計画だ。Apple社の計画に比べるとかなり低いが,決して弱気な数字ではない。

 また,デジタル・オーディオ市場では出遅れた日本メーカーが巻き返しを図っている。例えばソニーは,2004年度(2004年4月~2005年3月)の80万台から2005年度は450万台と5倍以上を計画している。これらメーカーの計画を合計した世界全体の生産台数は約7000万台に達する。

 一方,日経マーケット・アクセスは,2005年のデジタル・オーディオの生産台数を対前年比85.0%増の5275万台と予測した(図)。CDプレーヤやヘッドホン・ステレオなど従来からの携帯型音楽プレーヤの需要を考慮して,デジタル・オーディオの需要を算出した。メーカーの計画を積み上げた台数とは2000万台近い開きがある。このままメーカー各社が強気に生産すると,デジタル・オーディオは,大幅に余ることになりそうだ。

図●デジタル・オーディオのHDD/メモリ別の世界生産台数推移(2004年までは実績,2005年からは予測)

 デジタル・オーディオの生産台数で,2004年に世界シェア30.5%でトップだったApple社が,対前年比4倍も生産するのは,たとえ全体がだぶついても自社の「iPod」シリーズだけは売れるという自信とシェアを50%近くに引き上げてマーケットをコントロールできる独り勝ちを狙っているからだ。

HDDとフラッシュの境目は1Gバイトから2Gバイトへ

 メモリ・メーカーは,今後デジタル・オーディオ市場でどのような戦略を取るか。
 デジタル・オーディオは,HDD搭載機が大容量のハイエンド,NAND型フラッシュEEPROM搭載機が小容量のローエンドという位置づけになっている。NAND型フラッシュEEPROMの価格が下がれば下がるほどメモリの大容量化が進み,メモリ搭載機がHDD搭載機の市場を侵食するという図式だ。

 現在は,1GバイトまでがフラッシュEEPROM搭載機,2Gバイト以上がHDD搭載機である。しかし,デジタル・オーディオが生産過剰になって調整となれば,NAND型フラッシュEEPROMの供給過剰も避けられない。2G~4Gバイト・メモリ搭載機が価格競争力を持てるように,メモリ・メーカーが先手を打ってフラッシュEEPROMの価格を下げることを狙っているようだ。そうすれば,メモリ・メーカーは単純に搭載容量が倍増する上に,従来のHDD搭載機用の需要をモノにすることができる。