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車両走行時の受信可能エリア
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試作機の構成
試作機の構成
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タイムラグの低減
タイムラグの低減
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日立製作所とザナヴィ・インフォマティクスは,地上デジタル・テレビ放送を車載機器で受信する用途に向けて,12セグメント放送と1セグメント放送を自動的に切り替えて表示する技術を開発した。移動受信は電波環境が劣化するため一般に受信エリアは狭くなるが,両放送を切り替えて表示させることで受信エリアの拡大につなげる狙いがある。既に試作機を作成済みで,受信エリアがどの程度広がるのかを評価した結果を「2005年映像情報メディア学会年次大会」で発表した。

 地上デジタル・テレビ放送では,移動受信に強いとされる1セグメント放送が2006年3月から始まる。当面は,現行の12セグメント放送と同等の内容を送信する,いわゆるサイマル放送となる予定だ。これを利用し日立らが開発した技術では,電波環境が劣化した場合に受信・表示する放送波を通常の12セグメント放送から1セグメント放送に切り替える。これによって映像が欠落するブラックアウトを防いだり,受信エリアの拡大につなげたりするわけだ。なお開発した試作機ではダイバーシチ受信技術も採用して,受信感度を高める工夫も盛り込んだ。

 試作機を使って受信エリアがどの程度広がるかを評価したところ,12セグメント放送だけを受信できるエリアに比べて,距離にして2倍~3倍,面積比で4倍~9倍となる見通しを得たとする。評価実験の概要は次の通り。試作した受信端末を自動車に搭載し,時速50km~60kmで移動しながら東京タワーから放送されている放送波を受信した。5秒に1回の頻度で放送波を受信・表示できるかどうかを判定し,その結果をGPSから得た位置情報とともに収集したという。受信可能であるかの判定は,ビタビ復号化後のBER(bit error rate)に基づき,これが2×10-4以上の場合に受信可能であるとした。高いビルの存在や地形の影響などによって,局所的に受信できない事象は例外として扱った。なお評価実験は2005年1月に行った。

再生フレームの欠落や重複を避ける

 12セグメント放送と1セグメント放送を切り替えて受信・表示するときの課題が,タイムラグの発生である。切り替え時には通常,再生フレームが欠落したり,逆に重複したりする。映像信号の復号化回路を切り替えにはオーバヘッドが生じたり,再生データのバッファに時間を要したりするためだ。1セグメント放送そのものに,12セグメント放送に対する遅延成分を含んでいることもある。そこで今回の試作機には,再生フレームの欠落や重複を避ける工夫を盛り込んだ。

 例えば12セグメント放送と1セグメント放送の表示を同期させる処理である。具体的には,12セグメント放送のMPEG-2データと1セグメント放送のH.264データの双方を復号化処理し,この表示を切り替える際にPCR(program clock reference)を参照しながら同期を取るといった工夫である。受信・表示する放送波を切り替える判定条件として,今回はC/N(搬送波対雑音比)の推定値を利用した。12セグメント放送の受信・表示が困難な水準までC/Nが低下した場合には,1セグメント放送に切り替える。逆に12セグメント放送の表示が可能な水準に向上すれば,12セグメント放送を表示する。

 日立製作所とザナヴィ・インフォマティクスは今後の改良点として,同期処理や切り替え判定の最適化を挙げた。音声信号の同期処理についても,取り組む方針という。