三菱電機は,テレビが内蔵する2個のスピーカだけで5.1チャンネルのサラウンド音響を実現できる技術「DIATONE Surround」を開発した。2006年度には,同社の液晶テレビに内蔵するという。
同社は「薄型テレビの競争は現在では映像が中心だが,今後は音で差をつけたくなるはず」(同社 情報技術総合研究所 所長の肥塚裕至氏)とみる。DVDやデジタル放送など5.1チャンネル対応のコンテンツが急速に普及しているからだ。
同技術のカギは,本来は一方の耳だけに聞かせたい音が反対側にも届いてしまうクロストークをキャンセルすること。クロストークを打ち消すために,反対側のスピーカからキャンセル信号を発生させる。同社の技術では,特に後方の仮想スピーカの位置精度(音像定位)に優れているとする。
こうしたアプローチは他社の研究開発品でも採用しているが,DIATONE Surroundでは原音を低周波数域と高周波域に分け,高周波域の処理量を削減したことで演算量を減らした。高周波域については,位相に関する演算量を減らし振幅を中心とした演算処理をする。「高周波数域の演算を減らしても,方向や距離感の影響が少ないため」(同社)だとする。これにより,同社が以前開発したものと比べて処理量は1/8となり「市販されている中でも安価なDSPで実現できる」(同社)という。
三菱電機は,同技術を「CEATEC JAPAN 2005」で実演する予定にしている。