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図1 東京で開催された「Wireless USB Developers Conference」
図1 東京で開催された「Wireless USB Developers Conference」
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米Alereon社のWireless USBの評価用リファレンス・デザイン。同社のチップ「AL4100」と「AL4200」を利用している。帯域通過フィルタ(AL4100の下)にはTDKのチップを利用しているという。
米Alereon社のWireless USBの評価用リファレンス・デザイン。同社のチップ「AL4100」と「AL4200」を利用している。帯域通過フィルタ(AL4100の下)にはTDKのチップを利用しているという。
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 マルチバンドOFDM版のUWB(ultra wideband)の各種無線仕様を策定する米WiMediaアライアンスは,「Certified Wireless USB(以下,WUSB)」に対応したチップセット製品が複数のメーカーから2006年初頭に量産される見通しであると発表した。東京で開催中の「Wireless USB Developers Conference」(9月28日~29日)の場で明らかにしたもの。総務省が,2005年8月25日に「干渉回避技術」への対応を条件に米国と同様の出力規制値を認める提案を行ったことで,各チップメーカーがLSIの開発に拍車をかけているもようだ。

 今回の会議ではWUSB対応のLSIの発表が相次いだ。米Alereon,Inc.は,RFトランシーバLSIである「AL4100」,ベースバンドLSIの「AL4200」,デバイス向けMAC制御LSI「AL4300」のチップセットを開発した。AL4100とAL4200はサンプル出荷を開始しており,2006年第1四半期に量産する。AL4300は,2006年第1四半期にサンプル出荷を始め,同年第2四半期に量産するという。Alereon社は「これらはLSIの試作を繰り返した後の文字通りの製品版」(同社CEOのEic C. Broockman氏)と強調する。AL4100は,350nmルールのSiGe BiCMOS技術を利用して製造。AL4200は,130nmルールのCMOS技術で,台湾TSMC社に製造を委託した。

 Alereon社は,MAC制御用LSIに米Synopsys,Inc.が開発したIPコアを利用することを明らかにしたばかりである(Tech-On!の関連記事)。「音楽プレーヤやデジタルカメラなどへの組み込みには,我々独自のMAC制御LSIであるAL4300を使う。一方,USBドングルなどには,Synopsys社のIPコアと我々の物理層LSIとを組み合わせる」(Alereon社のBroockman氏)と,すみ分け戦略を説明した。

 また,イスラエルWisair社は,物理層とMAC回路を1チップに集積したLSIを2006年第2四半期に出荷することを明らかにした。同社は現時点で唯一,WUSB準拠で動作する物理層のチップセットを開発済みのメーカーであるが,RFトランシーバLSIの製造プロセスはSiGe BiCMOSだった(Tech-On!の関連記事)。

 これまでは唯一,RFトランシーバLSIも含めてフルCMOSでマルチバンドOFDM版UWBの物理層LSIを開発済みの米Staccato Communications, Inc.は,WUSB準拠のMAC制御LSIを含むチップセットを開発キットと合わせて,2005年第4四半期中にサンプル出荷することを明らかにした。

MAC制御LSIには米Intel Corp.も参入

 物理層LSIは製造せず,MAC制御回路やUSBのホスト・コントローラなどだけに対応するLSIを開発するメーカーも数社出てきた。NECエレクトロニクスは2005年9月20日に「HOST-MAC」と呼ぶ,USBホスト・コントローラ機能とMAC制御回路を1チップ上に集積したLSIのサンプル出荷を2006年3月までに始めると発表した。会場で同社は「2005年末にはLSIが完成する見込み」と,開発が順調に進んでいることをアピールした((Tech-On!の関連記事)。

 米Intel Corp.は,MAC制御回路とWUSBのデバイス機能を集積したLSIを2006年第1四半期にサンプル出荷する。「量産は2006年第4四半期になる」(同社の日本法人)。ただし,同社はNECエレクトロニクスと異なり,「USBのホスト機能を含めたLSIの開発は考えていない」(同社)という。

干渉回避はWiMediaの標準機能に

 今回は,現時点でのWUSB用物理層LSIのメーカーすべてが干渉回避技術(DAA:detect and avoid)に対応する方針であることも明らかになった。DAAは,放送の中継用回線や第4世代移動体通信システムをUWBの電波干渉から保護するために総務省が提案したもの(関連記事)。すでにWisair社が対応表明をしているが,この開発者会議で,Alereon社やStaccato社も,DAAに対応する方針であることを明らかにした。「近い将来,WiMediaアライアンスの物理層仕様にDAAが標準的な機能として加えられるだろう」(ある技術者)という。