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 富士通研究所(本社川崎市)は,クロメートに含まれる6価クロムの高精度かつ非破壊での検出に成功したと発表した。クロメート抽出液の化学反応を見る従来の手法と異なり,X線を照射した際の吸収スペクトルを調べるというもの。富士通グループは,この技術を材料調達に活用していくという。

 クロメートは,電子部品や機械要素部品のさび止め被膜として広く使われいるが,RoHS指令などの環境規制で有害物質に指定されている6価クロムを含むものがあることから,高精度の検出法が求められていた。従来は,さび止め被膜中のクロムを溶液に抽出した上で,ジフェニルカルバジド吸光光度法(6価クロムが酸性溶液下でジフェニルカルバジドと結合すると,紫色のジフェニルカルバゾンという化合物が生成されるという化学反応を利用し,この生成物を波長540nmの光で測定する方法)という分析を用いるのが一般的な6価クロムの検出法だった。しかし,この検出法では(1)抽出処理中に6価クロムが3価クロムに変化する可能性がある(2)抽出効率が確定できない(3)6価クロムだけでなく5価バナジウムや3価鉄,4価モリブデンでも反応する---といった欠点があり,分析の信頼度に難点があった。

 富士通研究所が確立した手法とは,クロメートに強力なX線を照射し,その吸収スペクトルと6価クロム特有のX線吸収ピークを照合することで,6価クロムの有無や濃度を判断するというもの。この手法であれば,5価バナジウムや3価鉄,4価モリブデンといったほかの成分と混同することがない上,非破壊検査が可能となる。さらに化学分析では分からなかった,6価クロムの深さ分布まで把握できるという。

 富士通研究所は,今回発表した手法の有効性を検証するために,世界最高の加速エネルギを持ってX線を放出できる大型研究施設「SPring-8」を利用した。また,この技術の詳細は日本分析化学会(第54年会,2005年9月14~16日,名古屋大学)で発表済みという。

連絡先: 富士通研究所 基盤技術研究所 分析技術研究部
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