パナソニック コミュニケーションズと松下電器産業は,高速電力線通信(PLC)のLSIと通信モジュールを開発し,すでに欧米で2005年8月からアダプタ機器を評価用にサンプル出荷していることを明らかにした。日本でも2005年12月にモジュールのサンプル出荷を開始する。物理層での伝送速度は170Mビット/秒,スループットは90Mビット/秒で「ハイビジョンの映像を3本同時に流せる」(松下電器産業 ネットワーク開発センター 所長の有高明敏氏)。松下グループのさまざまな家電製品に組み込む方針であるほか,LSIやモジュールの外販も行うという。
4年ごしの審議で2005年10月中にも結論がでる規制緩和問題については「今,提案されている条件は確かに厳しいが,我々はクリアできる」(同氏)と,大きな障害にはならないという見方を示した(Tech-On!の関連記事)。松下グループは,千葉・幕張メッセで開催するCEATEC 2005で,開催前日の10月3日から8日まで,さまざまな家電製品を接続した宅内電力線によるホーム・ネットワークを再現し,この高速PLCによる通信の公開実験を実施する。
パナソニック コミュニケーションズが開発したPLC用LSIは,PLCの物理層とMAC層回路,EthernetのMAC回路,125MHz動作のARMコアなどを1チップに集積した。130nmルールのCMOS技術で製造しており,消費電力は1Wである。「wavelet-OFDM」と呼ぶ変調方式を用いて,特定の帯域の出力をソフトウエア的に最大35dB低減できる。これによって,短波帯を利用する既存の無線システムとの共用をはかれるようにした。LSI単独では,2006年4月にサンプル出荷を開始する。
同LSIを搭載する通信モジュールは,周波数が4MHz~28MHzの搬送波を利用し,物理層の伝送速度170Mビット/秒を実現する。暗号通信用に128ビット長のAESを利用できる。
同グループは,今回の高速電力線通信を従来の450kHz以下の搬送波を利用する電力線通信と区別するため,「HD-PLC(high definition powerline communication)」と呼んでいる。