東京電力は,路面冷却効果の持続性を大幅に向上させる日本初の「ヒートアイランド抑制舗装」の技術を開発した。石炭火力発電で発生する石炭灰を保水材や路盤材に再生利用し,保水性のアスファルト層と路盤層の2層構造とした。2007年度を目途に実用化を目指す。
現在,路面のアスファルトが高温になることはヒートアイランド現象の一因とされ,その抑制が課題となっている。同社は,石炭火力発電所から排出する石炭灰について,従来から土地造成材やセメント原料として100%リサイクルしているが,さらに有効な利用方法を検討する中で,2004年10月から,石炭灰を再生利用した「ヒートアイランド抑制舗装」の技術開発に取り組んできた。
一般の舗装は,その大半が水分を浸透させないアスファルト層と路盤層からなり,これが路面の高温化につながっている。一部に保水性舗装はあるのだが,夏場に晴天が続き,保水したアスファルト層の水分が蒸発すると冷却効果が長続きしないという課題がある。この対策として,散水・給水設備を設置するなど強制的に給水する方法が検討されているが,コスト面などから普及は難しい。
これに対して,このたび開発した「ヒートアイランド抑制舗装」は,アスファルト層に石炭灰と数種類の添加材を配合した保水材を使う「保水性石炭灰アスファルト層」(上層)と,石炭灰に少量の石灰などを添加した路盤材を使用する「保水性石炭灰路盤層」(下層)の2層構造とした。
こうすると,石炭灰と数種類の添加材が反応すると,微細なすきまを多くもつ硬化体が形成されるため,その空間に水分を保持することができる。なお,路盤層に石炭灰を再生利用することにより,一般的な天然採石の路盤層に比べて約10倍の保水能力が認められる。さらに,毛細管現象により,水は湿潤状態の場所から乾燥状態の場所へ移動するという性質を持っている。
具体的には,夏場の日照などで上層が乾燥すると,湿潤状態の場所から乾燥状態の場所へ水が移動するため,下層の水分が上層に自然供給される。一方,下層は同様の特性により地中の水分を吸収するとともに,雨水などにより上層から浸透した水分を保水する機能を持つことから,水分を長期にわたり豊富に蓄えることが可能になる。このように下層から上層への自然給水が継続し,水の気化熱を利用した路面冷却効果を長期間持続できる。
なお,同社の技術開発研究所でのフィールド実験(実証試験)では,2週間の晴天が続き外部から水分が供給できない状況でも,一般的な舗装と比べて路面温度を約10℃低く抑えられるという効果を確認した。