村田製作所は,二酸化炭素を吸収するセラミックスであるオルソチタン酸バリウム(Ba2TiO4)を開発,「CEATEC JAPAN 2005」(2005年10月4日~8日,幕張メッセ)に参考展示した(図1)。燃料電池システムの効率化が図れる可能性がある。
この研究はもともと,同社の主力製品である積層セラミックスコンデンサ向けの材料であるチタン酸バリウム(BaTiO3)が製造段階で端材などの形で廃棄されているのを有効利用する目的で始まった。チタン酸バリウムに炭酸バリウム(BaCO3)を加えて800℃の高温化で反応させると二酸化炭素を放出してオルソチタン酸バリウム(Ba2TiO4)が得られる。
この逆反応として,オルソチタン酸バリウムを550~750℃の温度で反応させると二酸化炭素を吸収してチタン酸バリウムと炭酸バリウムに分解されることが確認された。この反応は何回も繰り返し行うことが可能で,100サイクル経過後でも劣化は初期性能の90%以上を保持する。二酸化炭素の吸収量はオルソチタン酸バリウム1kg当たり約100gである。
水蒸気改質の反応を進行
用途として同社が現在最も有望視しているのが,燃料電池の家庭用コージェネレーションシステムの一要素である天然ガス(メタン)の改質器の効率化である。天然ガスの改質器では,メタンに水を反応させて水素を得る「水蒸気改質」という方法が採用されている。その際,水素と同時に二酸化炭素と一酸化炭素が発生してしまう。これにより水素濃度を上げられないだけでなく,一酸化炭素は燃料電池本体の触媒を劣化させてしまうために減らす必要がある。そのために通常,水蒸気改質反応の後に,「シフト反応」と呼ばれるプロセスを行って残留一酸化炭素などを水素に変えて水素濃度を高める手法を採用している。こうしたことから改質器の反応部は複雑となり,小型化の要求が強かった。この水蒸気反応後のガスにこのオルソチタン酸バリウムを作用させて,二酸化炭素を吸収させると改質ガスから二酸化炭素が除かれると共に,化学反応の平衡がずれて水素が発生する反応が進むことになり,結果としてシフト反応がなくても同程度の水素濃度を得ることができるという。実験では,改質ガスの成分が水素74.36%,一酸化炭素12.18%,残留メタン4.1%,二酸化炭素9.49%であるところ,600℃でオルソチタン酸バリウムを用いると水素94.87%,一酸化炭素0.05%以下,メタン5.06%,二酸化炭素0.07%と水素濃度が上がるとともに,二酸化炭素と一酸化炭素の濃度を共に下げることができた。
家庭用コージェネレーションシステムは現在実証段階だが,今後の進展のタイミングを見て,改質器の効率化,小型化などが可能な技術としてアピールして行きたいとしている。また,水素ステーションでもメタンの水蒸気改質をベースにするシステムが中心であることから,水素ステーション向けにも有効ではないかとみている。