NECエレクトロニクスは,「CEATEC JAPAN 2005」で,同社の組み込み開発プラットフォーム「platformOViA」(Tech-On! 関連記事)を中心に据えて展示し,コンセプトを売り込んでいる。ソフトウエア開発の観点から見ると,マルチメディア系APIの概要が明らかになった点と,パートナーとして交渉中のソフトウエア会社が一部明らかになった点が目を引いた。
platformOViAは,携帯電話機向け,デジタルAV機器向け,車載システム向けの3系統の同社製システムLSIの上で,ソフトウエア・スタックを統合した形で提供する。「複数の異なるソフトウエア会社が提供するOS,ドライバ・ソフト,ミドルウエア群を統合,検証しようとすると,大変な手間がかかる。この作業をNECエレクトロニクスおよびNEC本体の側で担当したうえで,顧客に提供する」(同社)という考え方である。OSは「MontaVista Linux」とWindows CEに対応する。同プラットフォームを搭載した製品は2006年以降に登場する見込みである。まず携帯電話機からだという。
組み込みLinux上でマルチメディアAPIを提供
同社がこのプラットフォームの特徴として強調する点の1つが,抽象度が高いマルチメディアAPIを提供することである。Windows CEにはマルチメディア系API「DirectShow」があるが,組み込みLinuxには標準的なマルチメディアAPIがない。そこで,Winodws CEと同等の高レベルAPIをLinux上でも提供し,その上で作成したアプリケーションの移植性を高める。
マルチメディアAPIでは,ターゲット環境や再生するメディアが異なっていても,動画や音声などのデータを共通のAPIで扱える。例えば,携帯電話機でMP3オーディオを再生する場合や,デジタル家電でDVDを再生する場合でも,プログラミングの上では「初期化」「オープン」「開始」「一時停止」「終了」「クローズ」といった共通の関数で操作できる。「分野横断的なマルチメディア・インタフェースを提供することで,アプリケーション開発者や,ミドルウエア開発者の開発負担が減る」(同社)。
マルチメディア処理ドライバの層でも抽象化を進める。コーデックなど個別のメディア処理機能を「MC:メディア・コンポーネント」として抽象化し,個々のMCをどう結びつけるかという経路を,プログラミングではなく構成ファイルの変更で指定できるようにする。個々のMCがどのようなハードウエアあるいはソフトウエアで実現されているかを,プログラミングの段階で意識しないで済むようにする。
なお,同プラットフォームにミドルウエアや開発ツール,アプリケーションなどを提供するパートナーの候補として,以下の企業と交渉中としている(カッコ内は各企業が提供予定の製品)。ACCESS(ブラウザ),アプリックス(Java実行環境),米Wind River Systems Inc.(統合開発環境),スイスEsmertec AG(Java実行環境),京都マイクロコンピュータ(開発環境),ソフトフロント(IP電話プロトコル),モンタビスタソフトウェアジャパン(組み込みLinux),横河ディジタルコンピュータ(開発環境),である。