暗所コントラスト比が1万対1にも達する前面投射型プロジェクタや背面投射型プロジェクタ(リアプロ)が,「CEATEC JAPAN 2005」に登場した。台湾Delta Electronics, Inc.の日本法人であるデルタ電子は1万2000対1と「おそらく世界最高のコントラスト比」(同社の説明員)のリアプロを出展した(図1)。セイコーエプソンは1万対1のリアプロを見せた(図2)。いずれも1080p対応の試作機である。製品化時期は未定。台湾BenQ Corp.の日本法人ベンキュー ジャパンは,同1万対1でWXGA対応の前面投射型プロジェクタを展示した(図3)。このプロジェクタは2005年10月初旬から販売を開始する製品である。
デルタ電子のリアプロとベンキュー ジャパンの前面投射型プロジェクタは,いずれも米Texas Instruments Inc.製のDMD素子を使う。セイコーエプソンのリアプロは高温多結晶Si液晶パネルを使う液晶プロジェクタである。これまで暗所コントラスト比についてはDMD素子を使うプロジェクタが数千対1と,1000対1~1500対1程度の液晶プロジェクタよりも高かった。今回は両者とも暗所コントラスト比が高まった。
セイコーエプソンのリアプロは,液晶パネルと光量調整に工夫を加えることで1万対1の暗所コントラスト比を得た。液晶パネルについては,液晶の駆動をTN方式からVA方式に変更して電圧が印加していない状態で黒表示するようにしたり,液晶の下地膜になる配向膜に無機材料を使うことで黒表示時の光漏れを減らしたりした。光量調整については,光源と液晶パネルの間に絞り(アイリス)を設けた。映し出すシーンの明るさによって光量を変え,特に輝度が暗いシーンでの黒浮きを抑制した。
今回,セイコーエプソンは,同社や日立製作所,三洋電機,ソニーなど,高温多結晶Si液晶パネルを3枚使う液晶プロジェクタの普及を促進する団体「3LCD」が設けたブースにリアプロの試作品を展示した。このブースには3枚式を採用した各社のリアプロや前面投射型プロジェクタの既存製品がズラリと並び,映像を表示しながら画質の良さをアピールしていた(図4)。