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 古河電気工業は,環境負荷物質を含まない被覆材を使った耐熱電線(ノンハロゲン電線)のラインアップを強化し,耐熱温度が+105℃の製品として「エコエースプラス」シリーズを追加した。これまで難しかった難燃性と耐外傷性を両立した。これにより,ノンハロゲン電線全体で2006年度に3億円/月,2007年度に3億5000万円/月の売り上げを目指す。

 今回の電線の被覆材は,2006年7月に適用されるRoHS指令の対象になる鉛やカドミウムなどの重金属類だけでなく,リンやアンチモン,焼却処理するときに有毒ガスを発生させる塩素や臭素といったハロゲン化合物を含まない。電線の被覆材としてよく使われるポリ塩化ビニル(PVC)に比べて,環境負荷が小さい。この点に着目し「大手家電メーカーの1社がRoHS指令対応に合わせて,PVCの撤廃を検討している」(情報通信カンパニー 電機営業課の堀江靖課長代理)という。2006年以降,急速に市場が立ち上がると古河電工は考えている。

素材リサイクルも可能

 新製品のエコエースプラスは,被覆材に使うポリオレフィン樹脂を強化するために,新たに開発した化学架橋技術を採用した。ベース樹脂と難燃材である金属水和物との間をより強固に結合させることができる。これにより,一般的に使われているPVC被覆と同等の強度や耐外傷性を得た。ポリオレフィン樹脂はこれまで,難燃剤である金属水和物を大量に加えて所定の垂直難燃性を満足しようとすると,機械的な強度や耐外傷性,端末加工性を確保するのが難しかった。

 しかも,今回開発した被覆材は溶融して再成形が可能という特徴もある。「焼却時に有毒ガスが出ないだけでなく,将来,素材リサイクルできる可能性を持たせた」(堀江課長代理)。

 ただし,化学架橋方式による強化は,2000年から同社が販売しているノンハロゲン電線で使っていた電子照射方式に比べると難燃性にやや劣る。そこで+125℃,+150℃といった高耐熱グレードは従来製品を継続販売し,+105℃グレード品だけをエコエースプラスに切り替える。この製品がターゲットとする家電,OA機器の分野では「需要の95%を105℃グレード品が占める」(堀江課長代理)ため,実際の出荷は新製品が中心になる見込みだ。

 古河電工では,2006年度におけるノンハロゲン電線の市場をひと月に3億6000万円強と見ており,新製品の投入で「シェアの大半を取りたい」(堀江課長代理)ともくろむ。PVC電線からの代替でネックになるのは価格。PVC電線に比べると「細いもので2~3割,太いものだと2倍くらい高くなる」(堀江課長代理)。そこで家電メーカー側では,利用するケーブルの色数を減らすなど設計段階で工夫して,同一仕様製品の購入量を増やし,コストの増加分を吸収しているという。