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 仏Renault社は,自動車運転時のドライバの視界検証用にヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)を利用したシミュレーション・システムを開発した。現実の映像と3次元モデルのCG映像とを合成する複合現実(Mixed Reality,以下MR)技術を利用したものだ。HMDの向きや位置をトラッキングして,ドライバの身長や体格,姿勢などに応じて車外の風景映像をリアルタイムに合成するため,あたかも実際に車両内にいるかのように見える。2005年11月30日に東京で開催された「日本SGIソリューションキュービックフォーラム2006」の講演で発表した。

 ドライバは,HMDを装着して屋内の設置したシミュレーション用の車両に乗り込む。HMDにはカメラが取り付けてあり,実際にドライバが目にするのと同様の車内から見た映像を撮影する。同時に,その映像のフロントガラスやサイドウインドウの領域に,道路や町並み,車,歩行者といった周辺環境のCG映像をはめ込む。映像の合成は,映画の映像合成などで使われる「ブルースクリーン」と同様。車両の外周に緑のスクリーンを設置してあり,カメラの映像から緑色の部分だけを抽出し,CG映像をはめ込む。いわば,ブルースクリーンをリアルタイムで実行して,HMDに投影するわけだ。どこを向いてもそれに応じた映像が合成されるため,ドライバは,実際に屋外を走行しているように感じられる。この映像を解析することで,視界の良否やドライバが何を見ているかが分かる。CG映像は同社が独自に開発した「SCANeR」を利用して生成している。都市や地方の交通状況を再現でき,登場する車両が自律的に走行するのが特徴。歩行者の横断などのイベントも自由にプログラムできる。

 従来は車両の外の3面スクリーンや半円形スクリーンに映像を投影してシミュレーションしていた。しかし,ドライバの体格や姿勢によって違うはずの視界が画一的にしか評価できない点や,床面などのスクリーン外の視界が分からない点などが課題となっていた。