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 「発光ダイオード(LED)の新しい使い道は,照明用途だけではない」。山口大学 工学部 研究特任教授の田口常正氏は,2005年11月30日~12月1日に都内で開催されている「LEDEX Japan 2005」において医療向けLEDの研究成果などを発表し,LEDを利用した診断や治療が可能になることで医療機器向けにLED市場が広がることを強調した。同氏は,山口県の宇部地域での知的クラスター創成事業において,白色LEDや近紫外LEDを医学に応用させる技術の研究統括を務める。

「照明用の白色LEDは医療用としては万能ではない」


 医療用途におけるLEDの使い方として,田口氏は内視鏡への搭載を挙げた。同氏が開発を進める近紫外LEDチップを使う白色LEDを内視鏡の光源に利用することで対象物の色を忠実に再現でき,さらに近紫外LEDも内視鏡の先端部に取り付けることで体内の病原菌を撃退可能という。
 田口氏は近紫外LEDチップに,近紫外光をオレンジ色,黄色,緑色,青色に変換する4種類の蛍光体材料を組み合わせて白色を得ている。「白色指数」と呼ぶ太陽光との発光スペクトルのずれを評価する値(太陽光と一致すれば0になる)で比較すると,この白色LEDは1.03であり,青色LEDチップと黄色蛍光体材料を組み合わせる一般的な白色LEDの8.21よりも大幅に小さいので発光スペクトルは太陽光に近い。さらに,蛍光灯の5.31,HIDランプの3.27よりも小さい。「世間では白色LEDの発光効率が100lm/Wを超えると照明機器向け白色LED市場が大きく拡大するといわれ,高出力白色LEDの開発が進む。ただし,明るいだけの白色LEDは万能ではない」(同氏)。一般的な白色LEDは十分に医療現場の要望を満たしているとは言い切れず,この要望に沿った白色LEDがあれば医療機器向けの白色LED市場は大きく立ち上がるとみている。

ピロリ菌の除去に効果


 病原菌に対する近紫外光の効果として,ヘリコバクター・ピロリ,いわゆるピロリ菌を近紫外LEDによる光照射で消滅できるという実験結果を示した。ピロリ菌は慢性胃炎や胃潰瘍などの発生につながるとされる。シャーレを使って培養したピロリ菌に対し,中心波長が400nm~410nmの光を2時間照射することでピロリ菌は消滅したという。一般にピロリ菌を消滅させようとすると薬によって何日も治療する必要があったが,近紫外LEDを使うことで短時間の光照射で治療が済むとする。
 紫外光を体内に照射すると,体内の細胞に悪影響がおよぶことが懸念される。この点に関して田口氏は,波長400nm程度の可視光領域に近い近紫外光を使えば,悪影響はほとんどないとした。