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 国内生産を強化する動きが,日本メーカーにみられる。日本経済新聞の調査によれば,3年後の国内生産額を「増やす」と回答した企業の割合は6割を超えた。供給リードタイムや生産ノウハウ保護,開発期間の短縮など,国内生産のメリットは大きい。

 ただし,国内生産を強化するには,人件費の高さという障害を乗り越える必要がある。これまで,多くのメーカーが安価な労働力を求め,韓国,台湾,東南アジア,中国と渡り歩いてきた。これらの国・地域に比べて,人件費が高い日本で新たに生産拠点を設ける以上,生産性が優れていなければ,とても勝負にならない。

 国内回帰で先進的なメーカーの取り組みを調べたところ,そこには共通点があった。ラインを作り出す能力を非常に重視し,それを磨き続けていることだ。最適な造り方の研究を怠らないとも言い換えられる。こうしたメーカーの工場では,例え同じ種類の製品でも,大きさや質量,生産台数によって,まったく異なる造り方を採用していることが多い。本連載では,このようなラインを作り出す能力を“独創”する能力と表現したい。独創する工場こそが,優れた生産性を実現できる。実現できなければ,日本で生き残ることはない。独創する工場の取り組みを,全9回の連載で紹介する。

 この連載は『日経ものづくり』2005年10月号特集記事「独創する日本の工場」の一部内容を大幅に加筆・修正したものである。第3回以降の事例編にはWeb版でしか読むことができないものを二つ用意した。第1回,第2回にも最新の情報を盛り込んだ。

 連載の各回は以下の通りである。

 注:当初お知らせしていた計画から,事例編6と7の順番を入れ替えました。