「生産 国内シフト鮮明」---。2005年10月22日付の日本経済新聞は1面で,多くの日本メーカーが国内の生産能力を強化するつもりであると報じている。国内の主要製造業を対象としたアンケート方式の調査*で,国内工場の新設計画(建屋の増設を含む)の有無を問うたところ,35.3%が「決定した」,23.5%が「検討する」と回答(図1)。加えて,3年後の国内生産額を「増やす」とした企業は63.9%に達する(図2)。
* 日本経済新聞社が2005年9月下旬~10月中旬に実施した。160社が対象。そのうち122社が回答した。 |
![]() 図1●国内工場の新設計画(建屋の増設を含む)の有無 2005年10月22日付日本経済新聞1面よりデータを引用。 |
![]() 図2●3年後の国内生産額の増減 2005年10月22日付日本経済新聞1面よりデータを引用。 |
この結果を受けて,記事は「1990年代以降,日本メーカーは人件費などのコストが低い海外への生産移管を進めてきたが,今回の調査は国内生産拠点の位置づけを見直したうえで設備を増強する意欲が高まっていることを示している」と分析している。
「国内工場だから…」の甘えは許されない
ただし,国内の生産能力を強化する気運が盛り上がっているからといって,既存の国内工場のすべてが生き残りを保証されたわけではない。
例えば日本ビクターの横須賀工場(図3)。同社では国内唯一の民生用機器の生産拠点であり,海外工場をさまざまな面で指導する立場にある同工場も,その“地位”に甘んじることは許されていない。「本社は,数字を比較した上で,海外工場の方が優れていると判断すれば,遠慮なく海外工場に仕事を持っていく」(同社AV&マルチメディアカンパニー生産センター副センター長の時吉末男氏)。
![]() 図3●日本ビクター横須賀工場のライン 薄型テレビやデジタル・ビデオ・カメラといった民生用機器を製造している。写真はデジタル・ビデオ・カメラ「Everioシリーズ」のライン。 |
同工場は自主採算制だ。仕事が減れば,工場の経営は傾く。しかし,全社の位置づけとして他工場を指導する役目も果たさねばならない。海外工場の生産性向上を支援しながら,なおかつ自分たちは生産性で常に優位を保つという難しい運営を迫られている。
高コスト体質と再び向き合う