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 ベントレー・システムズ(本社東京)は工場の建物と生産ラインの3次元設計データを統合し,工場の立ち上げ期間を短縮する3次元システムの事業を本格化させる。すでに欧米では米Bentley Systems社が自動車車体メーカー,航空機メーカー向けに事業を開始している。米Delmia社などの工程設計システムやシミュレータにある生産ラインのデータを,ベントレーの3次元CAD「MicroStation」に読み込んで建物データと統合することで,干渉チェックやシミュレーションを実施するもの。実際に工場やラインを構築したり改修したりし始める前に問題点をなくしておくことで,ラインの早期立ち上げに役立てる。

 新築工場の場合,これまでは建物ができてから設備を搬入し,そこで初めて分かる不具合も多かった。3次元システムを使うことで,工場ができる前から生産ラインが収まるかどうか,周囲に十分な空間を取れるかどうか,作業者にとって作業性や視認性はどうかといった検証が可能になる。ある大手自動車メーカーの場合で,建物の設計と設備の設計とでは8ヵ月程度の時間差があるというが,これを同時に実行すれば手戻り工事がなくなり,工場の立ち上げ期間を大きく短縮できることになる。さらに生産ラインを改修する場合も,改修に着手する以前に問題点をなくしておける。

 欧州ではDaimler-Chrysler,BMW,Airbusなどの企業が導入を始めている。「Daimler-Chryslerは3年前に,すべての新設工場は事前シミュレーションを実行するように決めた」(ベントレー・システムズ)という。また航空機のブラジルEmbraer社でもシステム導入の検討を始めたという。

 ベントレーのMicroStationは機械設計ではあまり使われないが,建築やプラントなどでよく使われ,属性データを保持しやすいことが特徴。仏Dassalut Systemes社の「CATIA」や同グループの「Delmia」などとの双方向データ交換機能を整備した。生産ラインの形状データは3角形ポリゴンに分割,属性データはそのままMicroStationに読み込み,MicroStationで全体を見られる。「これまで設計と生産技術,生産ラインまでの3次元設計検討は進んできたが,実は工場の建物まで考慮しなければならないことはあまり分かっていなかった」(Bentley Systems Germany社の製造業ビジネス・デベロップメント担当のTorsten Rohrlack氏)という。