SOI(silicon on insulator)基板を使う混載向けキャパシタレスDRAMの微細化や高速化に向けた技術が,米国ワシントンD.C.で開催中の「2005 IEDM」に登場した(Tech-On!関連記事)。東芝は,90nmプロセスを使う128Mビット品を発表した(講演番号13.1)。米T-RAM, Inc.は,SOI基板のSi薄膜部に形成したサイリスタのベース領域に電荷を蓄積する手法で,書き込み時間を2nsに高速化した(講演番号13.2)。
ソース線やワード線にCuを適用
東芝は90nmプロセスの適用に当たり,従来開発を進めてきたキャパシタレスDRAMに二つの改良を加えた。第1に,セル・アレイの周辺回路を構成するトランジスタのウェル領域に,n型にドープした深いウェル領域を付け加えた。これにより,読み出し信号の強度を高めるために基板バイアスを印加する際に,基板表面から裏面側に流れ込むリーク電流の発生を抑制した。第2に,ソース線およびワード線の材料に初めてCuを適用し,動作を高速化するとともに,すでにCu配線を導入している90nmノードのロジック・プロセスとの親和性を高めた。
試作品のセル面積は6.2F2(Fはビット線のハーフ・ピッチ)相当の0.17μm2,チップ寸法は7.6mm×8.5mmである。上部Si膜の厚さは55nm,埋め込み酸化膜(BOX)の厚さは25nmで,完全空乏型の動作をさせた。
サイリスタのベース領域に電荷を蓄積
T-RAMのキャパシタレスDRAMでは,Si薄膜にp型(アノード)/n型/p型(ベース)/n型(カソード)の構造からなるサイリスタを形成し,ゲート電極直下のベース領域に電荷を蓄積させる。アノードをビット線,カソードをワード線,ゲート電極を書き込み線に接続し,それらに印加する電圧の組み合わせによってデータの書き込みや読み出しを行う。特徴は,インパクト・イオン化した電荷をボディ部に蓄積する東芝などの方式に比べて,動作速度を高速化でき,しかもGIDL(gate induced drain leakage)の発生を回避できることである。
130nmプロセスを使った同社の試作では,9F2(Fはビット線のハーフ・ピッチ)相当のセル面積と,2nsの書き込み時間を実現した。読み出し電流のオン/オフ比は107と大きい。
なお,メモリー技術の最新動向に関しては,「第4回 半導体メモリー・シンポジウム」で,東芝などが講演する予定である。