PR
再建策を発表する副社長の須藤民彦氏
再建策を発表する副社長の須藤民彦氏
[画像のクリックで拡大表示]

 業績低迷に悩むパイオニアは,経営の再建策について2005年12月8日に発表した。その骨子は,組織の見直しや開発の選択と集中,人員削減による固定費圧縮などである。

 まず組織としては,カンパニー制によって分散して事業を展開してきた体制を見直し,デジタル家電中心とした「ホームエンタテインメント部門」と,カーナビなどの自動車事業を中心とする「モーバイルエンタテインメント部門」の2つに集約する。

PDPのOEM供給を縮小

 収益悪化の要因となっているPDPテレビやDVDレコーダもホームエンタテインメント部門に1本化する。2007年春には,現在3カ所に分散している企画・開発・設計の部署を国内1カ所に集結させ,生産性の向上や部署間の密な連携を図る計画だ。

 PDPテレビについては,生産量の変動が大きいOEM供給を大幅に縮小し,自社ブランドの展開に集中する。自社ブランドの販売台数は,想定通り増え続けていることから,現在のところ生産ラインは休止していないとしている。ただし,来期については「現在稼働中の6本のラインのうち,画面サイズの大型化に対応できず休止するラインが1本~2本ほど出る可能性がある」としている。

 パイオニアのPDPパネルの生産能力は年間で約110万台あるが,今期のOEM供給を含めたPDPパネルの生産台数は64万台にとどまったという。なお,来期は今期に比べて40%~50%ほど生産台数が伸びると見込むが,生産能力は投資をしなくても十分足りるとしている。

 新商品の投入については,2006年春ごろに50インチ型のフルHD対応PDPテレビを商品化する予定。2006年1月1日付で同社の社長に昇格する副社長の須藤民彦氏は「通信販売している低価格の液晶テレビから高価格な大型テレビまでごちゃ混ぜになっている薄型テレビ市場で,パイオニアのPDPテレビの位置付けを仕切り直してから,巻き返しを図りたい」とした。デジタル家電市場は移り変わりが激しく「時間的な余裕がないことは分かっている」(須藤氏)。しかしそれでも,パイオニアが手掛けるDVDレコーダやホーム・シアターなどの製品と連携させることで,今までにない新たな機能を提供していくという。

 このほか,ディスプレイ関連ではアクティブ・マトリクス型の有機ELディスプレイの量産化を中止し,パッシブ・マトリクス型に注力することも明らかにした(関連記事)。

低価格品の開発を中止

 DVDレコーダについては,特に海外で展開しているハード・ディスク装置(HDD)を搭載していない低価格品の開発を中止し,デジタル・チューナを内蔵した先端商品に開発資源を振り向ける。

 さらに,LSIや組み込みソフトウエアなどの開発については他社との協業や提携を積極的に進めることで,開発費を抑制する。低価格のDVDレコーダや,VTRとの複合機などについては,生産委託による製品調達に切り替える。

 なお,DVDレコーダ用の光ディスク装置ユニットの事業は引き続き好調だという。今期は自社向けの100万台を含む300万台を供給する見込みで,これは世界市場の2割を占めるとしている。来期については世界市場の3割を占める600万台を目指す計画だ。

 このほか,パソコン用の記録型DVD装置については,収益性の高いノート・パソコン用の薄型品に注力すると共に,今後はDVDの次世代光ディスク仕様の1つである「Blu-ray Disc」に対応した装置の開発に軸足を移す。

来期は連結決算で黒字化

 パイオニアでは,グループ全体での固定費削減策として,全世界における生産拠点を現在の40カ所から30カ所程度に集約・統合し,これに伴い約2000人の人員削減を行う。さらに,ホームエンタテインメント部門での部署統合や拠点の集約などにより,パイオニア本体および国内グループ会社の従業員を対象とした600人程度の雇用調整を実施することを2005年12月1日に労働組合に申し入れたとしている。

 このほか,現在ニューヨークとアムステルダム,大阪でも上場している株式を東京証券取引所に一本化する。これにより,固定費と事務負担の軽減を図る。研究開発費についても,連結売上高比率で現在の約8%から7%以下に削減する。

 一方,今期157億円の営業利益を見込んでいる自動車向け事業については,来期も大いに育てたいとする。BRICs(ブラジルとロシア,インド,中国)などの地域で,市販カー・オーディオ機器の販売台数が拡大し,加えて欧米を中心に市販カーナビの販売台数が確実に拡大するからである。

 さらに,自動車メーカー向けのOEM供給も確実に増える予定である。このことから,来期はホームエンタテインメント部門が赤字でも,連結決算で営業利益を黒字化できるとみている。なお,ホームエンタテインメント部門については,2年以内をメドに赤字体質からの脱却を図るとしている。

【訂正】記事公開当初に「生産量の変動が大きいOEM供給を停止し,自社ブランドの展開のみに集中する」とありました部分は「生産量の変動が大きいOEM供給を大幅に縮小し,自社ブランドの展開に集中する」の誤りでした。ご迷惑をおかけしました読者の皆様ならびに関係各社には深くお詫び申し上げ,訂正させていただきます。