クラレは,液晶ディスプレイの偏光フィルム向けに,加工性と光学特性を改善したポリビニルアルコール(PVA,ポバール)系の新ポリマー「VF-PE」を開発した。高輝度と高コントラストが要求される大型液晶テレビ向けに,既にサンプル出荷を開始している。2006年春をめどに本格事業化を目指すという。
偏光フィルムは,360°すべての方向に振動する光の中で,一定方向に振動する光のみを通す材料である。液晶ディスプレイでは液晶の前後に2枚使う(図)。偏光フィルム向け材料として普及しているのがPVAにヨウ素で染色したフィルムである。PVAをフィルム化する際に延伸することにより分子は一定方向に揃う。このフィルムに光を当てると,揃った分子軸方向の光を吸収し直角方向だけの光を透過する光シャッター機能を持つことになる。
今回クラレが開発した「VF-PE」は,PVAをベースにある疎水性のモノマーを共重合させたものだという。詳細は明らかにしないが,こうしたコポリマーとすることによって,従来のPVAホモポリマーから成る偏光フィルムと比べて,延伸が容易で切断しにくいという優れた加工適性を持ちながら,偏光性能などの光学性能を大幅に改善できたとしている。
クラレはPVA偏光フィルムで85%程度のシェアを持つ最大手メーカー。近年ユーザーサイドからは特にテレビ向けに液晶ディスプレイが大型化するにともない,偏光特性を改善することによって高輝度や高コントラストを達成したいという要望が寄せられるようになったという。加えて,大型化により加工も難しくなってきている。今回開発した新偏光フィルムは,こうした要望に応え,特に40型以上の液晶テレビの高性能化に貢献できるものだとしている。