リコーの生産子会社であるリコーユニテクノ(本社埼玉県八潮市)と,日本ビクター横須賀工場。その共通点は,製品の大きさや形状,生産量といった条件に合わせて,さまざまな形式のラインを使い分けていることだ。
リコーユニテクノでは,ラインの使い分けの判断基準として,部品点数(製品質量)と月産台数をそれぞれ横軸と縦軸にしたマトリックスを用いている(図1)。生産量が変われば,例え同じ製品であっても,最適な造り方は異なるという判断だ。特に,同社で造っている業務用ファクシミリやA2判以上の用紙に対応する幅広タイプの複合機は,時期的な生産量の変動が激しい。
![]() 図1●リコーユニテクノのライン形式選定基準 部品点数と製品質量の関係は必ずしもこの通りにはならないが,見当を付けるための基準なので,これで十分という。(画像をクリックすると別ウインドーで拡大表示します) |
一方,日本ビクターの横須賀工場では,生産量の変動に応じた造り方の切り替えは基本的に行っていない。しかし,同じ薄型テレビでも,液晶テレビとプラズマテレビのラインは,それぞれ異なるライン形式を採用している(図2)。プラズマテレビでは,仕掛かり品を台車に載せ,ライン上を台車ごと移動させる。液晶テレビでは,検査工程の前まではプラズマテレビと同じように仕掛かり品を台車ごと移動させるが,検査工程はコンベヤを使う。液晶テレビとプラズマテレビとでは,当然ながら内部構造や売れ筋機種のパネルサイズが少しずつ異なる。こうした使い分けは,最適な生産方式を追求した結果といえる。
![]() 図2●日本ビクター横須賀工場が手掛ける製品とライン形式の関係 同じ薄型テレビでも液晶テレビとプラズマテレビとでは異なるライン形式を採用している。(画像をクリックすると別ウインドーで拡大表示します) |
リコーユニテクノも日本ビクター横須賀工場も,大量生産時代はこのような工夫をしていなかった。どちらも,ラインの使い分けを意識するようになったのは,多品種少量生産への対応が求められるようになってからである。リコーユニテクノの場合,1995年に親会社のリコーが中国・上海にファクシミリの生産拠点を新設したことが,大きく影響している。