旭電化工業は,300~500℃という高い耐熱性と99%以上の光透過率(膜厚5μm)を持つ新構造のシリコーン樹脂「アデカナノハイブリッドシリコーン」を開発した。熱硬化タイプと光硬化タイプがある。2005年12月より,電子部品や光学部品向けにサンプル出荷を開始した。
このうち熱硬化型は,スピンコーティングやスプレー塗布後に加熱することにより,耐熱温度(5%重量減少時の温度)500℃以上で,可視域の透過率が99%以上の0.1~1μm厚の透明薄膜を形成できる。Siウエハなどの基板や金属に対する密着性が高く,300℃に加熱してもクラックなどが発生しない。透湿性は,通常のシリコーン樹脂の1/5で,アウトガス量(加工工程中に樹脂より発生するガス)も0.1%以下(300℃1時間加熱時)と低い。誘電率は2.8と低いために,塗布型の低誘電率(Low-k)材料として有望だという。
光硬化型については,紫外線照射により硬化し,フィルム化が可能(図)。作成したフィルムは,柔軟性,機械的強度,透明性,はんだ耐熱性(250℃)を持つ。光導波路材料などへの用途が期待できるとしている。
分子構造としては,「ポリシロキサン(-Si-O-Si-)を主成分とした新規シリコーン樹脂」という以外,一切明らかにしていない。シリコーン樹脂とは,ポリシロキサンを主鎖とし炭素原子を含む側鎖が付いたものである。代表的なシリコーン樹脂は,メチル基(-CH3)が付いたものであるが,新規といっていることから,メチル基以外のなんらかの側鎖がついたものと見られる。または,炭素原子を含まない無機成分を持つポリシロキサン系分子とハイブリッド化したものと推測される(Tech-On!の関連記事)。いずれにせよ,ナノレベルで分子構造をコントロールすることにより,シリコーン樹脂の透明性を維持したうえで,高い耐熱性を持たせることに成功した。熱硬化性または光硬化性の官能基を導入して各硬化特性を持たせている。
価格は,従来のシリコーン樹脂よりは高くなる予定で,低誘電率透明コーティングやフィルム光導波路などの用途の中でも,従来材料では耐熱性などで実現できない次世代光学部品の作成に有効だと見られる。