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 ニイガタマシンテクノ(本社新潟市)の前身は,2001年に経営破たんした新潟鉄工所の工作機械・射出成形機部門である(図1)。会社が生まれ変わっても,以前と同じようにやっていては,先が見えない。生産性を飛躍的に高める必要があった。

 そこで同社が着目したのは,必ずしも価値創出に貢献していない「職人技」だった。もちろん,職人技自体を否定しているわけではない。職人技に頼り切り,意味もなく聖域化してしまうことに注意すべきだというのだ。この職人技に過度に依存している限り,生産性向上は成し得ないと考えた。


図1●ニイガタマシンテクノの生産ライン
写真は,射出成形機の組立工程。

 ニイガタマシンテクノの再建を支援したのは,新日本工機(本社大阪市)代表取締役社長である山口久一氏。同氏はニイガタマシンテクノの代表取締役社長も兼務している。といっても,同氏がニイガタマシンテクノに来るのは月に1回程度。その代わり,来るたびに工場を回っては,ダメ出しをして帰っていく。社長というよりは,どちらかといえばコンサルタントである。

 再建にあたり,同氏がニイガタマシンテクノに求めたのは「人も設備も半分で,従来と同程度の売上高を維持する」というもの。具体的には,それまで従業員1人当たりの売上高が2000万円前後だったところを,5000万円に引き上げるよう指示を出した。つまり,生産性を2.5倍に高めなければならない。「徹底的に無駄を探した」(同社取締役製造部長の阿部安則氏)。

「きさげ」は価値を生んでいるか

 改善対象として挙がったものの一つは,以前からボトルネックとなっていたマシニングセンタ(MC)の組立工程。従来,同工程は七つの「専門工程」に分かれており,それぞれを専門の作業者が担当していた。七つの専門工程とは「ユニット」「下回り」「総組」「配管」「電気」「A調」「据付」と呼ばれており,それぞれの作業内容は「スピンドルやテーブルなど主要部品の製造」「ベッドなど構造物の製造」「ユニットの大まかな配置」「油圧配管などの取り付け」「配線,電装品の取り付け」「最終組み立て」「顧客先での据え付け」である。このうち「下回り」に関しては外注していたほか,総組はそれほどノウハウが要らないこともあり,間接部門の従業員が担当していた。それ以外の工程は専門性が高かったことになる。

 こうした体制は(1)工程間のつながりが悪く,業務の量がバラつく(2)各工程の専門性が高く,職人技が幅を利かせるので,作業改善がしにくい(3)全体で納期短縮などの業務改善に取り組んでも,個別最適に陥ってしまい,効果が出るまで取り組みが続かない――といった問題を抱えていた。

 特に職人技に関しては「合わせ」と呼ぶ作業が組立工程で頻繁に発生しており,無駄な時間を費やしていた。合わせとは,MCの部品同士を組み付ける際,狙った精度を出すために行う作業全般を指す。具体的には,ヤスリ掛けやきさげといった作業だ。職人の世界である。門外漢は口も手も出しにくい。

 きさげ 幅広の工具で金属表面を削ること。平面度を確保したり,金属表面に模様を付けたりするために行うことが多い。

 MCのような工作機械は,精度が命だ。「職人技で精度を追求」といった話は“分かりやすい”ため,製品のPRに使われやすい。しかし,同社の阿部氏はそのような風潮に懐疑的だ。「『ウチは全数をきさげ加工しています』などと誇らしげに宣言するメーカーもあるようだが,本当に顧客のためになっているかどうかは疑問が残る」(同氏)。職人技のすべてを否定するわけではないが,少なくとも合わせが価値を生んでいるとは言い難かった。なぜなら,最初から部品の形状精度が高ければ,合わせをしなくても済むからだ。その分だけ,作業時間を縮められるし,顧客に早く製品を渡せる。こうした手法を,同社は「積み木方式」と呼んでいる。積み木のように組み立てるのが簡単という意味だ。

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