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図1 ポリイミド基板上に印刷で作製した3×3のメモリ・アレー
図1 ポリイミド基板上に印刷で作製した3×3のメモリ・アレー
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図2 FeFETの概略と,測定したヒステリシス曲線
図2 FeFETの概略と,測定したヒステリシス曲線
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 産業技術総合研究所は,DNAやタンパク質の一種を誘電体層の材料に用いて,強誘電性電界効果トランジスタ(FeFET)型のメモリ素子をプラスチック基板上に作製した。DNAに代表される生体高分子材料が,「棒状らせん構造」をしていることに注目して実現した。既に,FeFETを9個利用する3×3のメモリ・アレーを塗布法とスクリーン印刷の2方法で試作し,動作を確認したという(図1)。
 
 FeFETを開発したのは,産総研 光技術研究部門 有機半導体デバイスグループのグループ長の鎌田 俊英氏や同研究員の植村 聖氏など。有機材料を強誘電体材料として利用する研究開発は,高分子型と低分子型の両方で盛んに進められている(Tech-On!の関連記事)が,「実際にフレキシブル基板上に印刷でメモリ素子を作製したのは今回が初めて」(同氏)という。当初の応用は「無線タグ(RFIDタグ)などを想定している」(同氏)。

 鎌田氏らは,今回のメモリ素子を,ポリイミドなど各種のフレキシブル基板の上に,鮭のDNAや「PMLG(poly-methyl L-glutamate)」と呼ぶポリペプチド(タンパク質)の一種を材料とした誘電体層を作り,その上に有機半導体,およびソースやドレインなどの電極を形成して作製した。この誘電体層がゲート電圧に対して強誘電性を示すため,ドレイン電流-ゲート電圧特性が大きなヒステリシスを示し,メモリとしての機能を果たす(図2)。

 有機半導体の材料については「ノウハウに関係すること」(鎌田氏)として明らかにしなかった。ただし,今回のメモリ・アレーは,この有機半導体も含めてすべて印刷で作製したという。

 鮭のDNAとPMLGの共通点は,どちらもアミノ酸からなり「αへリックス構造」と呼ぶ2鎖の右巻きの棒状らせん構造をしている点。今回の材料選択は,この棒状らせん構造が決め手になった。「塗布など印刷での素子作製に向いている」(鎌田氏)というのが理由である。

「鮭のほうが性能が高い」

 DNAの採取元に鮭を選んだのは「たまたま入手できたから」(鎌田氏)。メモリとしては「低電圧で動作する点でDNAのほうがPMLGを用いた場合よりも高性能になりそう」(同氏)という。ただし,DNAには入手が難しく高価という課題がある。

 一方のPMLGは,量産が容易で低コストだが,当初駆動電圧が+数10Vと高いという課題があった。産総研は,「PMMA(poly-methyl methacrylate)」と呼ぶPMLGに似た構造のアクリル樹脂の一種をPMLGに配合することで,+10V程度というDNAに近い低電圧で駆動できるようになったという。

 今回試作した3×3メモリ・アレーの誘電体層の膜厚は,800nmと厚い。この厚みは「一定の絶縁性を保つために必要」(産総研)だった。低電圧化は,この膜厚の低減につながる,という。