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“印刷メモリー・アレイ”の作製
“印刷メモリー・アレイ”の作製
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10日以上のメモリー保持特性を確認
10日以上のメモリー保持特性を確認
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“印刷メモリー・アレイ”の動作を確認
“印刷メモリー・アレイ”の動作を確認
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 産業技術総合研究所の光技術研究部門は,印刷法でプラスチック基板上にメモリー素子を作製し,10日以上のメモリー保持特性を持つことを確認した。外部から入力した価格などの製品情報を記憶・表示できる電子タグ値札への応用や,書き換え時の消費電力をケタ違いに削減したフレキシブル液晶ディスプレイへの応用が期待できる。これまで印刷法でプラスチック基板上に駆動素子や表示素子を作製した事例は数多くあったが,メモリー素子の作製は技術的障壁が高く,開発事例も少なかった。特に安定性の確保が難しく,「メモリー素子の保持特性まで報告した例はほとんどなかった」(同部門有機半導体デバイスグループ長の鎌田俊英氏)と言う。

 鎌田氏のグループは今回,「棒状らせん構造」を持つ生体高分子材料の分子相互作用を変化させると,強誘電性を示し,優れた強誘電性メモリー機能が得られることを見いだした。生体高分子材料は,水やアルコールなどに溶解しインク化することが可能なため,印刷プロセスに使うことができる。こうした生体材料の中で棒状らせん構造を取るポリペプチドを使って強誘電性薄膜を塗布法により形成し,メモリー素子を作製する技術を開発した。この強誘電性薄膜を誘電層として上下を電極で挟んだ2端子素子を作製し,その電気容量特性を評価して,メモリー性を示すことを確認している。

 さらに,誘電体層にポリペプチド膜,半導体層に有機半導体を使ったメモリー素子を試作し,その保持特性を評価した。電源を切った状態でも記録状態を安定に保持することができ,10日以上経過しても2ケタのドレイン電流のオン/オフ比を保持できることを確認している。分子内の水素結合により棒状らせん構造を取るポリペプチドは,電子状態の変化に加えて,らせんピッチなどの分子構造の変化によっても分極が生じるため,メモリー保持特性に優れているのではないか,と鎌田氏は推測している。

 また,今回開発したポリペプチド膜を使って,3×3のメモリー・アレイをプラスチック基板上に塗布およびスクリーン印刷法によって試作した。その書き込みと読み出しの検証も行い,メモリーとしての動作を確認している。4×4のボタンを持つ入力用ボードを使ってプラスチック基板上のメモリー・アレイにデータを書き込んだ後,メモリー・アレイを入力用と同様に4×4のボタンを持つ出力用ボードに接続してデータを読み出し,入力したボタンと同じ位置にあるランプを点灯させることで実証した。

 このほか同グループは,ポリペプチド膜と同様に棒状らせん構造を持つ2本鎖のDNAを使ったメモリー素子も試作している(Tech-On!関連記事)。