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 小ロット化や多品種少量生産に取り組む際,まず手を付けるのは組み立てや検査といった工程の見直しだろう。それに対して,その前段の機械加工の工程はなかなか改革が進まなかった。設備が大掛かりな上,段取り替えに時間がかかるので,セル生産のような手法を適用しにくいからだ。組み立てに比べて小ロット化や多品種少量生産への対応がどうしても遅れがちだった。しかし放っておけば,いずれはここがボトルネックになる。こうした加工工程の小ロット化という目標に,大胆な工程レイアウトで挑んだのが自動車部品メーカーのヨロズである。

 もともと日産自動車の系列部品メーカーだったヨロズは,米Tower Automotive社の傘下だった2003年3月に,全世界の生産拠点で「トヨタ生産方式(TPS)」を採り入れる*1。結論から言えば,同社はTPS導入によって,在庫やスペースの削減で大きな成果を上げた。「スペースの有効利用により,売り上げが増えても工場を拡張する必要がほとんどなかった」(同社執行役員で営業部長の笠原充氏)。

*1 日産自動車は2000年10月,当時保有していたヨロズの全株式を米Tower Automotive社に売却した。2004年3月には,Tower Automotive社が保有するヨロズの全株式を,ヨロズ自身が取得。ヨロズは独立系の自動車部品メーカーになった。自社株比率は,2005年3月時点で30.8%。

 そのヨロズの中でも特に目覚ましい成果を上げたのが,生産子会社のヨロズ栃木(本社栃木県小山市)である。

 同社では,主に日産自動車やホンダといった自動車メーカーに,サスペンション部品を供給している。サスペンション部品の製造は,鋼板の打ち抜き,プレス成形(またはハイドロフォーミング),溶接による組み付けといった工程からなる。いずれも大掛かりな設備を要する上,段取り替えに時間がかかる。小ロット化は困難であるように思えた。

平準化の波が押し寄せる

 ヨロズが小ロット化に取り組まなければならない理由,それは自動車メーカーの「平準化生産」に合わせるためである。ヨロズ栃木の場合,顧客の自動車メーカーは,月末になると翌月の生産予定数(内示数)を提示してくる。同社はこの数字を基に,翌月の生産計画を作成する。ただし,内示という言葉からも分かるように,この数字は「確定」ではない。確定するのは72時間前である。

 「自動車メーカーは1週間単位で生産を平準化している」(ヨロズ栃木取締役社長の別井康夫氏)と,同社では推測している。これは,生産する車種や量を1週間単位で均(なら)していることを意味する。

 平準化の目的は,作業の内容と作業量の変動を抑えることによる生産性の向上である。そういう意味では,平準化の単位は長ければ長いほど良い。ただし,需要は当然ながら変動する。「必要なものを,必要なときに,必要なだけ造る」というジャスト・イン・タイム(JIT)の考え方と平準化は,一見すると矛盾している。従って“実需とそれほど乖離(かいり)せず,平準化による安定のメリットも享受できる”絶妙のバランスを狙って,平準化の単位を決めなければならない。自動車メーカー,言い換えれば自動車の組み立てラインは,その単位が1週間というわけだ。

 ヨロズ栃木にとっての受注が1週間単位で平準化されているとすると,当然,同社の生産もそれに応じて調整する必要がある。後工程に相当する自動車メーカーの組み立てラインが平準化している以上,自分たちがまとめて造っているままだと,在庫が山積みになってしまう。まとめて造って,まとめて運んでも,顧客は受け入れてくれない。

 ヨロズ栃木では,1カ月単位で平準化生産することにした。「自動車メーカーは自動車部品メーカーの生産能力を超えるようなバラつきの激しい注文はしてこない。これが平準化の前提条件としてあった。過去の実績からも,内示数と確定数はほぼ同数」(同社の別井氏)*2。つまり1カ月単位で,基本的に全種類の部品を毎日同じ数だけ造ればよい。1直の生産数は翌月の内示数を営業日数と1日当たりの直数で割ったもの。さらに,1直の就業時間を1直の生産数で割ると,タクトタイムを得られる。このタクトタイムを使って,作業者の配置や作業の割り振りなどを決めていく。

*2 新車の売れ行きが想定以上の場合など,発注を大きく増やす可能性は考えられる。

点在していた工程を集めて“掛け持ち”可能に