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 家庭用プリンターのインク・カートリッジに関する特許権の侵害をめぐってキヤノンがリサイクル・アシストを訴えていた訴訟の控訴審で,知的財産高等裁判所(知財高裁)はキヤノンの逆転勝訴となる判決を言い渡した(Tech-On!の関連記事1)。キヤノンは「仮執行の宣言」も求めていたが,知財高裁は「仮執行の宣言は相当ではないので,これを付さないこととする」とした。

 「原判決を取り消す。リサイクル・アシストは再生インク・カートリッジの輸入および販売,販売のための展示をしてはならない」とする主文を読み上げた知的財産高等裁判所長の篠原勝美氏は,判決言い渡しの場で今回の判決の理由に言及した。

 特許権侵害の有無を争ったのは,インク・カートリッジの製造方法に関する発明(特許番号:第3278410号)である。キヤノンはこの発明を使ってインク・カートリッジを製造し,国内外で販売する。リサイクル・アシストはキヤノンのインク・カートリッジにインクを再び充填して製品化し,輸入および販売を行っている。「リサイクル・アシストの再生品がキヤノンの発明の構成要件を充足している点で争いはなく,形式的には特許権の侵害となる」(篠原氏)。しかし,発明による製品を譲渡した場合には,特許権はその目的を果たしたものとして「消尽」するという最高裁判所の判例(いわゆる「BBS事件」)がある。今回の係争では,リサイクル・アシストが再生したインク・カートリッジにおいてキヤノンの特許権が消尽するかが争点となっていた。

発明の本質を加工した場合は特許権が消尽せず

 篠原氏は,特許権が消尽しない場合が2つあると説明した。(1)「製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合」,(2)「第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合」,である(判決文より)。「インクをすべて消費した後でも,カートリッジ部分はまだまだ使用できる」(篠原氏)ため,(1)には該当しない。しかし,(2)に該当するため,特許権は消尽せず,キヤノンが特許権を行使することは許されると判断した。

 キヤノンのインク・カートリッジの製造方法に関する発明には,インクを安定供給するとともに,「カートリッジの向きが変わってもインクが外部に漏れないようにする工夫が入っている」(篠原氏)。インクを含浸させるスポンジをカートリッジ内に複数収めることでインクの壁を形成する工夫や,それを実現するために充填する一定量のインクは「発明の本質である」(同)。リサイクル・アシストが輸入・販売する再生品は発明の本質的部分を構成する部材の一部を加工または交換したものに該当し,特許権は消尽しないと判断した。

 知財高裁は,国内と国外のそれぞれで販売した純正カートリッジの両方の再生品について,リサイクル・アシストによる特許権侵害を認めた。「国内と国外で説明は異なるが,結論に変わりなし」(篠原氏)とした。

約150人が傍聴券を求めて行列

 2005年通期の決算で過去最高の売上高と純利益を記録したキヤノンは,家庭用インクジェット・プリンターなどから成る「コンピュータ周辺機器」事業も好調だった(Tech-On!の関連記事2)。同事業の2005年通期の売上高は1兆2449億円で,前年同期を8.3%上回った。同社の収益源の1つとされる消耗品の事業を揺るがしかねない係争への注目度の高さを示すように,東京高等裁判所には傍聴券を求める多くの人が詰め掛けた。40枚の傍聴券を求めて約150人が行列していた。

 キヤノンは今回の判決を受けて,「当社の主張が認められた妥当な判決と評価する。当社は,これまでも知的財産を重視して事業を行なってきた。今後も同様の方針の下,お客様に更に喜んで頂ける商品,サービスの提供に努力してゆく所存である」とのコメントを発表した。