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4ビット/セルを実現可能とする「NROM」。イスラエルSaifun Semiconductors Ltd.のデータ。
4ビット/セルを実現可能とする「NROM」。イスラエルSaifun Semiconductors Ltd.のデータ。
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「PHINES」は基板からSiN膜にホット・ホールを注入して書き込み,制御ゲートからSiN膜に電子をFNトンネリングさせて消去する。台湾Macronix International Co., Ltd.のデータ。
「PHINES」は基板からSiN膜にホット・ホールを注入して書き込み,制御ゲートからSiN膜に電子をFNトンネリングさせて消去する。台湾Macronix International Co., Ltd.のデータ。
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2カ所の電荷蓄積領域を物理的に分離する「TWISTOR」。韓国Seoul National Universityのデータ。
2カ所の電荷蓄積領域を物理的に分離する「TWISTOR」。韓国Seoul National Universityのデータ。
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 「NVSMW 2006」の最終日に開かれた窒化膜トラップ(SONOS)型フラッシュ・メモリーのセッションでは,2ビット/セル以上の多値化技術の発表が相次いだ。イスラエルSaifun Semiconductors Ltd.が4ビット/セルの多ビット化,台湾Macronix International Co., Ltd.と韓国Seoul National Universityがそれぞれ2ビット/セルの多値化について発表した。

 SONOS型は絶縁性のSiN膜に電荷を蓄積するため,電荷を物理的に離れた複数の場所にためることでセル当たりのビット数を増やせる。例えば,2ビット/セルに多ビット化する場合,浮遊ゲート型では電圧レベルを四つに分離する必要があるのに対し,SONOS型では電荷を異なる2カ所に蓄積すれば電圧レベルを二つに分離するだけで済む。このため,多値化する際に課題となる書き込み/読み出しの動作マージンを確保しやすい。こうした利点から,米Spansion Inc.のSONOS型の2ビット/セル技術「MirrorBit」は,すでにNOR型フラッシュ向けで量産実績がある。

SiN膜中の2カ所に電荷を別個に蓄積する

 4ビット/セルの可能性を示したSaifunの「NROM」は,MOS FETのゲート絶縁膜をSiO2/SiN/SiO2の3層構造として,SiN膜のソース近傍とドレイン近傍にそれぞれ電荷を蓄積する。データは,基板からSiN膜にホット・エレクトロンを注入して書き込み,基板からSiN膜にホット・ホールを注入して消去する。

 4ビット/セルは,電圧レベルを四つに分離し2つの電荷蓄積領域をそれぞれ2ビット化することで実現する。この場合,1ビット当たりのセル面積は1.25F2相当となる。今回の試作例では,多値化によるチップ面積の増分を4%に抑えたほか,1000回繰り返し動作させた後に55℃で10年間のデータ保持を実証した。「現状で唯一の4ビット/セル技術」(Saifun)であることを同社は強調する。

 Macronixが提案する「PHINES」は,セルがSONOS型,アレイ構造がNAND型である。データは,基板からSiN膜にホット・ホールを注入して書き込み,制御ゲートからSiN膜に電子をFN(Fowler-Nordheim)トンネリングさせて消去する。NROMと同様にSiN膜のソース側とドレイン側にそれぞれ電荷を蓄積し,電圧レベルを二つに分離して2ビット/セルを実現する。1ビット当たりのセル面積は2.3F2相当となる。

 Seoul National Universityが発表した「TWISTOR」の特徴は,SONOS構造をMOSFETのソース近傍とドレイン近傍にそれぞれ別個に設けていること。NROMやPHINESでは,一つのSiN膜の両端に電荷をそれぞれ蓄積するため,MOS FETのゲート長が短くなると蓄積した電荷同士が干渉して動作マージンを確保できなくなる懸念がある。これに対し,TWISTORは電荷蓄積領域を物理的に分離しているのでこうした干渉に強い。

書き込み速度が浮遊ゲート型の1/10以下

 ここにきて多値セルの発表が相次いでいる理由の一つは,もともと混載向けのNOR型の置き換えを目標に開発が先行してきたSONOS型が,NAND型の浮遊ゲートの代替技術とみなされることが多くなってきたことである。NAND型で2ビット/セル技術が確立している浮遊ゲートに対抗すべく,多値セルによる大容量化技術の開発が熱を帯びている。

 ただし現状では,NAND型の浮遊ゲートをSONOS型で置き換えるのは,特に大容量向けでは難しいとの声が多い。その理由として多くのフラッシュ技術者が指摘するのが,SONOS型のデータ書き込み速度の低さである。

 浮遊ゲート型のようなFNトンネル方式ではなく,ホット・キャリヤの注入によってデータを書き込むSONOS型は,浮遊ゲート型に比べて1度に書き込めるビット数が少ない。そのため,浮遊ゲート型では,書き込み速度が1ビット/セルに比べて落ちる2ビット/セルですでに10Mバイト/秒を実現しているのに対し,SONOS型は1Mバイト/秒程度にとどまっている。この程度の書き込み速度では,NAND型の用途として有望視される「高精細動画などの大容量データを書き込む用途では使えない」(フラッシュ技術者)。そのため,書き込み速度を飛躍的に向上させる技術が出てこなければNAND型の浮遊ゲートの代替は難しいとの見方が強い。