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試作チップの外観
試作チップの外観
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 米UCLA(University of California, Los Angeles)と米WiLinx Corp.は,ソフトウエア無線機向けとうたう広帯域の受信用ICをISSCC 2006で発表した(講演番号 26.5)。800MHz帯~5GHz帯の無線周波数に対応し,IEEE802.11gやGSM,CDMA,W-CDMAなど各種の通信方式が定めるRF回路への要求仕様を満たすとする。

 CMOSアナログ回路設計で知られるAsad Abidi氏の研究グループの成果ということもあり,講演には多くの参加者が駆けつけた。受信回路の構成は,ゼロIFのダイレクト・コンバージョン回路と,離散時間アナログ信号処理回路を組み合わせたもの。この構成を採用した理由を登壇者は,消費電力を低く抑えるためと説明した。「RF信号をA-D変換器で直接サンプリングする場合,12ビットの分解能で10Gサンプル/秒の変換速度が必要になる。これだと消費電力は500Wクラスになり,現実的ではない」(登壇者)。今回の試作チップの消費電力を評価すると,GSM方式の受信時に25mW~67mW,IEEE802.11gでは30mW~72mWだった。

 Abidi氏の研究グループは過去の学会で,広帯域のLANやミキサ回路などRF回路を構成する要素技術を数多く発表してきた。今回の報告のポイントは,その要素技術を受信回路として統合したことにある。国内から参加した研究者は「ソフトウエア無線に向けたRF回路の実現手法の1つの方向性を示した。本成果はある意味,Abidi氏の業績の集大成だろう」と語った。

 一方で,もう一歩踏み込んだ情報を求める声もあった。例えば送信回路の実現手法について,今回は言及が無かった。複数の通信方式への対応状況についても,RF信号の特性評価にとどまった。ある技術者は「ベースバンド信号の変調精度(EVM)がどの水準にあるのかについての評価結果が無かったのは残念」と述べた。

 90nmルールのCMOS技術で製造する。試作した回路の有効面積は3.8mm2である。



『日経エレクトロニクス』誌では2006年1月30日号で,ソフトウエア無線に関連するCover Story「ワイヤレスが変幻自在に」を掲載しています。