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 MEMS関連ベンチャのマイクロプレシジョンは,携帯型プロジェクタを実現するための新しい製造技術を開発,2007年に量産化する。携帯型プロジェクタは,ミラーの角度を制御して光源の反射光をスクリーンに映し出すディスプレイである。光源となる半導体レーザーと微小な走査型ミラーを組み合わせることで,携帯電話機に内蔵できるほどの小型プロジェクタを実現できる。今回,マイクロプレシジョンはここに必要なミラー駆動用アクチュエータをポリマーによるMEMSで実現,小型化と低コスト化を可能にした。

 反射光を走査するプロジェクタを実現するには,一般にミラーを2次元走査させる機構が必要になる。この機構は,ミラーを縦方向に走査するアクチュエータと横方向に走査するアクチュエータを組み合わせて構成する。これで動画を表示するには,縦方向を60Hz前後,横方向を数KHz以上で走査する必要がある。このような走査を可能にするアクチュエータの開発は,現在のところSiによるMEMS技術を使う手法が盛んである。ただし,走査する際の周波数は,Si材料の剛性に基づく共振周波数で決まり,Siを使うと高速化することも低速化することも難しい。

 高速化する手法に関しては,ステンレスなどの金属を使って数十KHzへと高速化する手法の開発が進んでいる(『NIKKEI MICRODEVICES』2006年4月号,p.154「次世代プロジェクタをより安く,MEMS使わず金属プレス加工で」を参照)。これによってHD(high definition)など高精細の動画を表示できるようになる。

 その一方,走査周波数が数十Hzといった縦方向用アクチュエータに関しては,「MEMSでの実現は難しいと見られていた」(マイクロプレシジョン)。このため,モーターなどを使って実現する手法の開発が進んでいるという。今回,同社が数十Hzでの走査周波数を可能にしたのは,駆動部の材料にポリマーを採用したからである。ポリマーの材料について同社は明らかにしていないが,一般に入手可能な材料であり,ポリイミドに比べて柔らかいとしている。

 駆動は,一般的な電磁方式を採用しており,永久磁石とコイルによる電磁磁石によって駆動力を発揮する。ポリマーは可動部となるミラーの支柱部に使っている。試作したデバイスの大きさは,6mm×12mm×3.7mmである。将来的にはさらなる小型化も可能である。反対にミラーが大きいデバイスも開発できる。

 これによって,縦方向と横方向の2次元走査を小型化に向くMEMS技術で実現できることになる。携帯電話機に搭載するといった応用が可能になる。パソコンで表示するような高精細な画面を液晶ディスプレイではなく,近くの壁などに映して見られるようになる。同社は,7型程度の領域に表示することを想定している。

 また,ポリマーの採用によって数十KHzで1次元走査するスキャナを使った1次元バーコードの小型化・低コスト化も可能になる。1次元バーコードの需要は,2次元バーコードが普及しても根強く残る可能性が高く,同社は既存の1次元バーコード向けスキャナの代替を狙う。既存のバーコードは,組み立てによる機構部分を備えるため,落下時の衝撃で破損する恐れが高い。これに対して,柔らかいポリマーを使った構造では,衝撃に強い。「ポリマーを使うことでモバイル用途を開拓していきたい」(同社代表取締役会長の浅田規裕氏)。しかも,スキャナの周辺回路には既存品をそのまま使える。