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図1 波長群の波長変換(群波長変換)のイメージ
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図2 非線形結晶を2段にして群波長変換を実現
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図3 従来より信号劣化が大幅に低減 赤丸が今回。白丸が従来型の波長変換による信号のS/N
図3 従来より信号劣化が大幅に低減 赤丸が今回。白丸が従来型の波長変換による信号のS/N
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図4 最大4波長群,256波の多重を確認
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 NTT未来ねっと研究所は,波長多重技術で多重された光信号の束を信号のS/Nの劣化なしに一括して波長変換する技術を開発した。また,その技術を用いて入出力ポートがそれぞれ16ある光スイッチを開発した。スイッチング容量は10Tビット/秒と,1台の機器としては最大クラスである。5年後の実用化を想定しているという。

 今回開発した技術は,将来の光の大容量ネットワークでの応用を想定したもの。信号を光から電気に変換せず,光のままで経路制御をする。具体的には,波長ごとに経路を決める方式が有力である。この場合,通信途中で信号のあて先を読んだりする必要がない。自動車の高速道路に例えれば,車線ごとに行き先が決まっているようなものといえる。

 ただし,この場合,ネットワークが合流,分岐するノード部分で,同じあて先,つまり同じ波長を持つ光信号が「衝突」する可能性がでてくる。その場合に備えて,一方の光信号の波長を別の波長に光信号のまま変換する技術が研究されている。

 NTTは,通信の大容量化が進むにつれて,「波長群」と呼ぶ,波長多重技術で多重した光信号の束ごと波長変換する技術が必要になると考えている。例えば,1波長で10Gビット/秒の光信号を波長帯1520nm~1550nmの中に64波多重したものを,まるごと1560nm~1590nmの波長帯に引越しさせるような技術である(図1)。ところが,これまでは,波長群の信号をS/Nを保ったまま波長変換することができていなかった。

波長変換を2段にして劣化を低減

 今回のブレークスルーは,波長群をS/Nの劣化なしに波長変換できるようになった点である。具体的には,「擬似位相整合ニオブ酸リチウム(QMP-LN)」と呼ぶ光学結晶を,2段に並べて実現した(図2)。1段目のQMP-LNに周波数がf0の励起光を通すと,光学結晶の非線形効果によって周波数が2倍の2次高調波(SHG:second harmonic generation)が生じる。この2次高調波の光を周波数f1(=f0−ε)の信号光と共に2段目のQMP-LNに通すと,2本の光の差周波(DFG:differential frequency generation)の光が出力される。この光が,波長変換された光となる。出力光の周波数f2は,f2=2f0−f1=f0+ε,となる。こうすると,出力光に雑音が混ざらずに済み,理想的にはS/Nが劣化しない(図3)。

 従来は,QMP-LNを1個だけ用いる構成だった。この場合,1個のQMP-LNに,励起光とそのSHG,そして信号光の3本の光を通すことになる。すると,励起光と信号光の和周波が雑音となって出力光に混ざってしまう。この結果,波長変換によってS/Nが劣化する。

 NTTは,この波長変換技術を用いて,64波多重で640Gビット/秒の波長群を入力16ポート,出力16ポートの光スイッチに通し,出力先をさまざまに切り替える実験を行った(図4)。その際,同じあて先の波長群が4本重なった場合に,波長帯をずらすことで,4波長群を1本の光ファイバに多重できることも確認したという。この場合の多重数は256波,伝送速度の合計は約2.5Tビット/秒。光スイッチ全体の容量は,10Tビット/秒となる。