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Canon EXPOではカメラを振り下ろすだけで,無線LANを介して画像をSEDテレビに転送するという操作方法を実演した
Canon EXPOではカメラを振り下ろすだけで,無線LANを介して画像をSEDテレビに転送するという操作方法を実演した
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米Sony Electronics Inc.が2006年5月発売予定のフォト・ストレージ「HDPS-L1」。ハード・ディスク装置に格納した写真を,スライドショー形式で表示する
米Sony Electronics Inc.が2006年5月発売予定のフォト・ストレージ「HDPS-L1」。ハード・ディスク装置に格納した写真を,スライドショー形式で表示する
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オリンパスの「E-100RS」
オリンパスの「E-100RS」
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キヤノンの「PowerShot SD700 IS」
キヤノンの「PowerShot SD700 IS」
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ニコンの「D200」
ニコンの「D200」
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 デジタル・カメラ・メーカーの先行きについて,写真家でジャーナリストの山田久美夫氏と議論した。

(大槻智洋=日経エレクトロニクス)

本記事の前編はこちら

SED延期は大打撃

――私はPMAに初めて参加したので比較が難しいのですが,以前と比べて盛り上がっていましたか。

山田氏 いま一つでしたね。私がそう感じる最大の要因は,カメラの新しい使い方があまり提案されなかったことにあります。中でも残念だったのは,キヤノンがSEDテレビを中心とした製品・サービス展開を見せなかったことです。

――単にSEDテレビの試作品を見せただけですものね。2005年10月開催の「 Canon EXPO 2005」の方がまだ,テレビとどう連携するかを見せていた。

山田氏 しかもSEDテレビの発売が約1年半延期になった。テレビは10年くらい買い替えない製品だけに痛い。キヤノンにとって大打撃です。東芝はいいんですよ。液晶テレビを持っているから。キヤノンにはリビング・ルームで核になる製品がない。これまで無線LANを載せたデジタル・カメラや,現行品は放送局向けですがHDTV対応のビデオ・カメラなどを販売し,自社製品を使って静止画と動画をリビング・ルームで楽しんでもらおうとし始めていたのに…。

提案が乏しい

山田氏 テレビとの連携について新味があったのは,韓国Samsung Techwin Co., Ltd.のHDMI端子付きの機種「L85」くらいかな。

――L85はHDMIを付ける必然性のある機能を備えていませんが,いずれやらなければならないことを最初に実現しましたね。「提案」を感じたのはこれだけですか。

山田氏 あと,前面投射型プロジェクタと,据え置き型のフォト・ストレージが興味深かったです。プロジェクタはキヤノンやセイコーエプソン,松下電器産業などが見せました。海外では従来から,リバーサル・フィルムを投射して写真を楽しむという文化があります。プロジェクタはそのデジタル版といえます。
 米Sony Electronics Inc.が発売するフォト・ストレージは,720pのHDTV動画として写真をテレビで見られる。記録容量が80Gバイトあって実売価格は300米ドルだから,結構売れるんじゃないかな。

――あのフォト・ストレージですか。ニッチな商品かと思っていたのですが…

山田氏 海外では普通,DVDレコーダにハード・ディスク装置が付いていない。画像ファイルを気軽に大量に保存できるので重宝されますよ。

商品企画がよくない

山田氏 新しいカメラの使い方を考えないと単価下落に対抗できないし,カメラ業界全体の活力が失われてします。銀塩カメラより単に便利,というだけがデジタル・カメラの価値ではない。デジタル・カメラはもっと人を楽しませる道具になるはずです。
 エンジニアは頑張っています。技術力はある。でも,開発の方向性を見失っている。商品企画がよくない製品があまりに多いんじゃないでしょうか。

――ただ,デジタル・カメラの普及期以降で,単なる便利さにとどまらない新たな提案をできた機種って…ん~,オリンパスの「E-100RS」はそうでしたね。連写速度は動画並みで,シャッター・ボタンを押す前の画像の記録もできる。シャッター・チャンスを逃さないという点で図抜けていました。

山田氏 E-100RSは発売が2000年と,生まれてくるのが早過ぎてヒットしなかったけれど,優れた提案をしましたね。今あのコンセプトはうけるかもしれない。

――あと,カシオ計算機のEXILIMですかね。初代の超薄型機や液晶パネルを大型化した「EX-Z3」は,カメラの持ち運び性や,写真を見る点に対して明確な提案をしました。

山田氏 うん,そう。でもそういう機種は数少ない。だから開発は大変です。それでも,撮像素子などの部品のロードマップに合わせて商品を企画していてばかりでは,これから厳しい。もう市場がぐんぐん伸びる状況ではないのだから。

余裕が出てきたキヤノン

――そうした世に問う機種が必要な一方で,販売量を稼ぎ出す機種も作らなきゃいけないですよね。この点ではキヤノンの強さが際立ってきたと思います。同社のコンパクト機は従来,仕様表を比べる限りは他社と似たような製品だった。
 それでも販売台数ランキングの上位に立てるブランド力や画質の高さがスゴかったわけですが,今回のPMA発表機には際立った特徴がある。「PowerShot SD700 IS(日本名:IXY DIGITAL 800 IS)」は光学式手ブレ補正付きの光学4倍ズームで,本体が26.4mmと薄い。さらにIXY DIGITALシリーズよりも安い「PowerShot A」シリーズについては機種数を増やした上に,光学ズーム倍率を4倍以上としました。

山田氏 キヤノンのコンパクト機はそもそも,そつなく仕事をこなしてくれます。だからユーザーの満足度も高い。今回のPMA発表機はトップ・シェアに立って,いろいろ挑戦できる余裕が出てきたことを表しています。ただ,これまでのところ,「次」を見せてくれたコンパクト機はない。ここが課題ですね。

こいつと仕事したい

山田氏 キヤノンのデジタル一眼レフ機も,そつなく仕事をこなしてくれるのですが,コンパクト機と違うのは撮る過程も結構,楽しめる点です。機構部品の出来がとてもよくて,連写したときなどに,いかに精巧に作られているかが伝わってきます。使っていて心地いい。

――ニコン製品と比べてどうですか。

山田氏 それは機種によって違うので一概に言えませんが,例えば,ニコンが2005年に発売した「D200」は,スゴくよくできている。もともとニコンの銀塩一眼レフ機「F」のヒトケタ台は,「こいつと仕事したい」と思わせる魅力がありました。動体に対するオートフォーカス,ファインダーの見やすさ,防塵・防滴性などでは,キヤノンの「EOS-1」シリーズの方が上をいっていた。実際「F4」あたりはキヤノンの同等品より1ケタ近く販売台数が多かった。
 「心地よさ」とか「こいつと仕事したい」と思わせる魅力って,新機能の付加と違って,外面的に分かるものじゃないのですが,そこまで作り込めるかどうかが,今後の重要な差異化要素の1つだと考えます。

「手のひら一眼」

――最後に,オリンパスや松下電器産業が使う,デジタル一眼レフ機の交換レンズ規格「フォーサーズシステム」について聞かせてください。この規格は撮像素子の撮像部が4/3インチ型と小さいので,本体やレンズの小型化と,高画質を両立できるかもしれない面白い規格ではないでしょうか。

山田氏 知ってます?フォーサーズシステムでの4/3インチ型って昔のポケット・カメラ用フィルム(110判フィルム)とほとんど同じ撮像面積なんですよ。110判フィルムを使う一眼レフ機として,例えば4半世紀前に発売されたペンタックスの「Auto 110(ワンテン)」がありますが,これなんか小さいですよ。一眼レフ機なのに手のひらにすっぽり隠れちゃう。

――そんなに小型化の可能性があるんですね。撮像素子にはフィルムと違い斜めに差し込む光を跳ね返してしまうといった課題がありますが,技術や材料は進歩しているわけですから。

山田氏 これに限らず,カメラはまだまだ面白くできる余地があるんですよ。この余地を現実にできるのは各カメラ・メーカーだけです。