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 2006年3月中旬に発足した「脳を活かす研究会」が,2006年4月4日に講演会を開催した。同研究会の目的は,脳研究者の交流を活発にすること,最新の研究成果などを広めること,脳や神経を管理・操作する際に考慮する倫理(神経倫理)に関して議論することなどである。具体的な活動内容は,定期的な研究会や講演会の開催,WWWサイトや報告書を通じた情報発信などである。

 4月4日に開催した発起人会では,会長に理化学研究所の甘利俊一氏,計画委員長に生理学研究所の伊佐正氏,事務局長に国際電気通信基礎技術研究所の川人光男氏を選出した。発起人には,代表7人のほかに国内の脳研究の第一人者ら96人が名を連ねている。

 当面,脳の信号から人の意識や意図,無意識下の情報を読み取るための「脳を読む分科会」,人と機械のコミュニケーション手段を研究する「脳を繋ぐ分科会」,脳神経に関わる社会問題を検討する「脳と社会分科会」に分かれて活動することとした。発起人会では,「脳研究者は,情報流通にも自覚と責任を持ち,質の高い情報を発信すべき」「異分野との交流の場を提供すべき」「神経倫理については,より深い議論が必要で,内容は公開すべき」という意見が出たという。

 講演会には400名を超える登録者があり,当初予定していた会場では収容しきれず,大画面のモニターを設置した別室を用意したほど。このうち,企業からの参加者が39%を占めている。大学関係者が38%で続く。4月3日時点で218人を数える研究会員でも企業の会員が43%を占め「予想以上に企業の関心が高いことが分かった」(計画委員長の伊佐氏)という。

 講演会では,NHKの番組でサイボーグや脳に関する番組制作に関わった立花隆氏が登場,数十枚に上るスライドを駆使しながら,海外の最新研究動向を精力的に報告した。「取材を始めるまでは,サイボーグというのはSFの世界の話だと思っていた」という同氏は,2つの点で大きなショックを受けたという。1つが既にサイボーグ技術は現実になっていること,もう1つが世界の趨勢が基礎研究から応用に移りつつあることである。頭の中で考えるときに生じる信号を検知して外部機器を動かす研究や,記憶障害がある人を支援する人工海馬などを紹介した。

 このほか,作家で東北大学の特命教授を務める瀬名秀明氏が「脳と社会」をテーマにして講演,日本大学大学院 医学研究科の片山容一氏が,脳深部刺激(DBS)によって脳障害による人体の不随運動(自分の意図とは反する自発的な動き)を取り除いた事例などを紹介した。DBSは,脳のある部位に電気的な信号を付与することによる治療方法である。周波数が130Hz,電圧2V程度の電気信号を加えることで,不随運動を止められることが確かめられている。

 4月5日は,米Princeton UniversityのSamuel M. McClure氏による脳機能の分析に基づいたマーケティングや経済学に関する講演や,産官学のキーパーソンによるパネル討論会が行われる。