Motorola India社のカフェテリア
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インドからの帰路に立ち寄ったシンガポールの空港にて
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 最近の1年間で3000万契約増と,猛烈な勢いで成長するインドの携帯電話機市場。フィンランドNokia社,韓国Samsung Electronics社に次いで,シェア3位につける米Motorola社のインド法人に,現地での携帯電話機の開発体制について聞いた。取材に応じたのは,Motorola India Electronics Pvt. Ltd., Product Director, DSP & Embedded Systems, Global Software GroupのBhaskar Harita氏である。(聞き手=枝 洋樹)

 −−インドにおけるMotorola社のソフトウエア開発の歴史を教えてほしい。
 Harita氏 インド法人でのソフトウエア開発は1991年から始めた。現在はインド全体で2万5000人のエンジニアが働いている。インドでソフトウエアを開発することを決めたのは当時,機器開発においてソフトウエアが占める割合が大きくなると予測したからだ。よいソフトウエアを開発することが他社製品との差別化を可能にすると判断した。1993年には90人程度のエンジニアを抱えていた。CMMのレベル5を取得したのはこのころだ。

 −−現在の開発体制は。
 Harita氏 携帯電話機のソフトウエア開発には1500人ほどが関わっている。このソフトウエア技術者が,Motorola社が2005年に世界市場で投入した25~30台の携帯電話機が搭載するソフトウエアのうち,40%ほどの開発を手がけている。担当するのは,OSからプロトコル・スタック,ブラウザ,ユーザー・インタフェース,テスト関連といった具合に多岐に及ぶ。CDMAの基地局向けソフトウエアなどを試験するラボはバンガロールの施設内に12カ所くらいある。新たな技術開発にも積極的に取り組んでいる。2005年はインド法人が出願した特許のうち30件が公開された。

 −−1500人で効率的にソフトウエア開発を進めるための工夫は。
  Harita氏 重要なのはソフトウエアの再利用だ。あらかじめスケーラビリティとポータビリティを考慮して設計しておかなければいけない。しかもわれわれは携帯電話機に3種類のOSを使っている。すなわち自前のSynergy OS,Linux,Windows CEだ。これらの間でもソフトウエアの再利用をできるだけ可能にしておかなければならない。例えば,Synergy OSとLinuxの間ではAPIを統一してポーティングの手間を省けるようにしている。ハードウエアのアーキテクチャもノース側とサウス側に分けて自由度を高める工夫をしている。ソフトウエアはレイヤ1にアセンブリを使う以外は,C/C++,Javaで記述する。

 −−効率的な再利用を図るコツは。
 Harita氏 異なる製品間でソフトウエアを長期に渡って再利用するために,まずロードマップをきちんと描くようにしている。これが重要だ。その中でソフトウエアのメジャーな更新をいつするのかなどスケジュールを固めていく。常に2,3年先までは決めてある。携帯電話機1台当たりの開発期間は新機種を発売する場合,8カ月から10カ月だ。現在NTTドコモと共同開発している機種は,テストも含めて開発に2年くらいかける。2006年末に投入する予定だ。ソフトウエア仕様の変更くらいなら3~4カ月でできる。例えばアプリケーション・ソフトウエアやUIを変えるといって作業だ。

 −−インドでは多くの言語が使われている。こうした言語への対応はどう進めるのか。
 Harita氏 今後,英語を話せない人々にも携帯電話機を普及させようと思ったら,できるだけ多くの言語に対応することが重要になる。単に単語を置き換えればいいというわけではない。例えばヒンズー語には52個の文字がある。これをキーボードで入力してもらうのは大変だ。ソフトウエア・キーボードを利用したり,予測機能を充実させるといったノウハウがいる。

 −−現在よりも低価格の携帯電話機を開発することは可能か。
 Harita氏 格安の携帯電話機を作るのなら,まず開発期間の短縮を図る。同じ人数で新機種を2カ月で開発できるようになれば,それだけでソフトウエアの開発コストを1/4にできる。モジュラリティも大事。不要な機能を簡単に削れるようにすれば,メモリ容量の削減にもつながる。専用回路をソフトウエアで置き換えることも,コストを削減する上でメリットがある。もっとも,日本の携帯電話機メーカーがインドに食い込めるとしたら,高級機市場ではないか。そこそこではなく,ベストの機種を求める富裕者層があるからだ。我々の薄型機種「Razr」もインド国内では特定の購買層から引き合いが多い。