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 「HDCAMのダビング編集は,ダビングするたびに画質が劣化している。フィールド順が逆になって品質が低下する可能性も高い。デジタル放送の番組素材の画質は本当にきれいと言えるのか」。4月17日に開催された「FPD International 2006」プレセミナー第3回『FPDテレビの本当の画質とは』で,映像機器アナリストの小寺信良氏は,デジタル放送における番組制作の問題点を,自身の番組編集者としての経験を基に解説した。

 番組制作上の問題点として,ビデオ・カメラと映像記録方式,作品制作プロセスを挙げた。まず民間放送での撮影用のビデオ・カメラが,画素数1440×1080画素のCCD(固体撮像素子)を搭載したHDCAMが主流であることと,編集用機器や記録方式もHDCAM対応であることを紹介した。本来はフルHD(high definition)規格カメラで撮影するべきところだが,「まず撮影の時点で1920×1080画素で撮られていない」とする。さらに,コスト・ダウンのために家庭用ハイビジョン機器の規格であるHDV対応のビデオ・カメラを使う可能性もあるとする。テープなどのメディアへの映像記録もHDCAMでは1440×1080画素で,フルHDで記録していないとする。

 次に,スポーツや報道を除く約80%の番組が編集番組であり,何度もダビングを繰り返すうちに画質が劣化しているとする。SD(standard definition)時代の制作編集システムでは,ダビングによる画質劣化がなかったため,HDでもダビングを繰り返す制作プロセスが一般的だとする。しかしHDCAMの編集は,画素も帯域も圧縮するため,ダビングするたびに画質が劣化するとする。「バラエティ番組では最大で8~9回もダビングするのが普通だが,4~5回目のダビングで画質劣化は分かるほど」とする。

 またパソコンなどに取り込んで編集を行うノンリニア編集では,もともと1080iというインタレースの信号をプログレッシブに変換するため,画面の拡大などの処理でフィールド順が逆になったまま編集される可能性が高くなるとする。フィールド順が逆になると,動きのある映像では画像のブレやボケのように見えるため,画質が低下する。

 過去のビデオやDVDパッケージなど,SDの素材が今後も存在するため,SDをHDディスプレイで表示する時のアップコンバートの品質も今後問題になるとする。小寺氏は,今後のテレビはテレビ番組だけでなく,テキストや写真,パソコン動画など様々なソースに対して最適な表示ができることが求められると指摘した。