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【図1】ポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷により作成したアクチュエータパターン
【図1】ポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷により作成したアクチュエータパターン
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【図2】基板をカットして得られたユニモルフ構造のアクチュエータ
【図2】基板をカットして得られたユニモルフ構造のアクチュエータ
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【図3】2次元に有機アクチュエータを配列したモジュールによる搬送デバイス
【図3】2次元に有機アクチュエータを配列したモジュールによる搬送デバイス
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 日立製作所基礎研究所は,nmレベルの炭素微粒子を混合した導電性の有機材料を使い,印刷法によってアクチュエータを試作することに成功した。特徴は,印刷法であるため低コストで量産できる可能性があることに加え,大気中,低電圧で動作し,軽くて軟らかいことである。生体とのなじみがよいことから人工筋肉などのユニークな用途が考えられるのではないかと期待している。

 材料は,40nm径のカーボンブラック系微粒子をフッ素系のポリマーに混合したものだ。フッ素系を選んだのは,熱膨張係数が高いためで,このほかエポキシ系なども検討しているという。材料を溶媒に溶かしてインク化し,ポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷する。

 こうして作り込んだアクチュエータパターンの上に(図1),銀インクで配線パターンをスクリーン印刷した後,カットして,アクチュエータ層とポリイミド層からなるユニモルフ構造のアクチュエータを作製した(図2)。

 ユニモルフ構造とは,膨張率の大きい材料と小さい材料を重ね合わせた構造のアクチュエータのこと。この場合,印刷した有機材料に通電することにより内部の炭素微粒子がジュール熱により発熱して膨張,一方,基板であるポリイミドフィルムは膨張しにくいために,膨張する材料を凸側として全体が屈曲する。

ロボットハンドも試作

 今回試作したアクチュエータの大きさは7mm×9mmで,伸縮率は最大で4%,実用的には2%程度だという。駆動電圧は数~数十Vで,最大約5MPaの応力を発生できる。動作速度は,30Hzの入力信号に追従し,耐久性は1万回程度あることを確認したとしている。アクチュエータの動作温度は,今のところ室温から+150℃まで上げている。

 このアクチュエータを2次元状に配列したマトリックスシートモジュールも試作した(図3)。印加電圧8Vで,先端が約3mm変位する。各アクチュエータを制御して動かすことで,このモジュールの上に乗せたシートを搬送することができたという。

 またアクチュエータを4枚使って,ロボットハンドを試作した。一つの指の重さは0.03gと軽く,4本の指で40gの試薬瓶を掴むことができた。


試作したロボットハンド。40gの試薬瓶を掴むことができた 動画1●試作したロボットハンド。40gの試薬瓶を掴むことができた
動画動画(MPEG,約12Mバイト)

※動画の公開は終了しました。


 形状記憶合金などに比べると発生できる応力はまだ小さいが,加工しやすく軟らかいなどの有機材料の特徴を活かした用途が考えられるという。同社は今後,人工筋肉や搬送デバイス以外にも,点字を浮かび上がらせるような触覚伝達デバイス,動くポスター,気流制御デバイス,マイクロロボットなどの新しい応用分野を開拓する考えだ。なお,同研究成果は,第55回高分子年次大会(2006年5月24日~26日,名古屋国際会議場)で発表される(講演番号1Ph152)。