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図1 2006年夏商戦にボーダフォンが投入する「Vodafone 804NK」(「Nokia N71」)
図1 2006年夏商戦にボーダフォンが投入する「Vodafone 804NK」(「Nokia N71」)
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図2 2006年秋に登場するビジネス・ケータイのベースモデル「Nokia E61」
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図3 Nokia社 CTOのTero Ojanpera氏
図3 Nokia社 CTOのTero Ojanpera氏
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 世界シェア35%——世界の携帯電話機市場でトップを走るフィンランドNokia Corp.の強みは,ハードウエアとソフトウエアについて強力なプラットフォームを持つことだ。ひとたびプラットフォームを開発すれば,そこから派生して数多くの端末を短期間で市場に投入できる。2005年には,56もの機種を矢継早に投入した。

 こうした戦略により,北米・欧州などの高級機市場から,BRICs,中東,アフリカなどの低価格機市場までシェアを確保する。日本でも,2006年夏商戦には「Nokia N71」をベースとする「Vodafone 804NK」を発売(図1),さらに2006年秋にはビジネス向け端末「Nokia E60」「Nokia E61」をベースとする機種を投入する(図2),(ニュース・リリース1同2)。

 Nokia社は,共通プラットフォームを開発するうえで何を重視しているか。来日した同社 Chief Technology Officer, Executive Vice PresidentのTero Ojanpera氏に,同社の研究開発体制を聞いた。


(聞き手=浅川 直輝)



——Nokia社の強みの一つに,ハードウエアとソフトウエアの共通プラットフォームを自社開発するという戦略がある。Nokia社は,2~3年に渡って通用するプラットフォームを開発するうえで,何を重視しているのか。

Ojanpera氏 二つの要素を挙げたい。一つは,誰もが自由にアプリケーション・ソフトウエアを開発できるような,オープンなプラットフォームとすることだ。ソフトウエアの開発者にとって,世界規模で展開するプラットフォームでアプリケーションを開発できるメリットは大きい。開発したアプリケーションを一地域,一機種のみの展開に終わらせず,容易に世界展開できるからだ。

 もう一つは,近い将来に携帯端末に求められる機能を予測し,プラットフォームに実装することだ。例えば一般消費者向け端末のプラットフォームには,音楽再生などのマルチメディア機能や,インターネット関連機能を拡充する。ビジネス向けであれば,仕事の生産性を高めるようなアプリケーションを用意する。具体的には,電子メール送受信ソフトウエアやブラウザの使い勝手を高めるほか,パソコンとの同期機能などを開発する。

——Nokia社は,ディスプレイやカメラ・モジュールなどの周辺部品を自前で開発せず,多くを外部から調達している。Nokia社の研究開発の強みはどこにあるのか。

Ojanpera氏 我々は,明確な戦略を持って内製と外部調達を使い分けている。例えば,S60(Symbian OSベースのミドルウエア群)などのソフトウエア・プラットフォームは競争力の源泉であり,内部で開発する。そのほか,W-CDMA関連の回路も我々が開発している。その方がコストや電力効率で有利だからだ。

 確かにディスプレイやカメラ・モジュールは外部調達しているが,多くの場合は部品メーカーとの共同開発という形をとっている。我々は,外部調達した部品を組み合わせるための「アーキテクチャ」を設計できる力を持つ。これは我々の大きな強みだ。

——「アーキテクチャの設計力」とは何か。具体的に教えてほしい。

Ojanpera氏 例えば我々は,各部品をつなぐインタフェース仕様を独自に決められる能力がある。きわめて高性能のカメラ・モジュールがあっても,その部品単体では力を発揮できない。信号処理,雑音対策,ディスプレイへの表示方法といった要素を考慮に入れて,初めて部品の実力が発揮できる。そうしたシステム全体の深い理解に基づいて,我々は部品メーカーとの協力のもと,独自にインタフェース仕様を定めている。

——部品の組み合わせやインタフェース仕様を決定できるために,重要な要素は何か。やはり高いシェアが前提になるのか。

Ojanpera氏 シェアは確かに有利に働くが,要素の一つでしかない。重要なのは,ある領域の技術を深く理解することだ。我々が各部品の技術を熟知しない限り,最適なアーキテクチャは見出せない。例えば,我々はディスプレイを内製していないが,ディスプレイを熟知する技術者はいる。携帯端末にカメラ機能を導入する際には,デジタル・カメラを熟知する技術者が活躍した。

——今まで携帯端末は,カメラ機能や音楽機能など,デジタル家電の機能を次々に取り込んできた。デジタル家電の製品群を持たないNokia社が,このような設計力をどうやって身に着けたのか。

Ojanpera氏 Nokia社の研究所(Nokia Research Center)は,各分野を深く理解している技術者を,大学や他の企業から積極的に招き入れている。

 招いた技術者には,まず基礎的な研究開発に従事してもらう。その後,技術者を事業部門に送り,商品に近い開発をしてもらう。そうして,技術者や研究者にビジネス感覚を身に付けさせる。Nokia社の研究開発の哲学は,常に革新を生み出しながら,「ビジネスになるか否か」という規律を持つということ。いくら革新的な技術でも,開発期間が長すぎたり,コストが掛かりすぎては意味がない。

 端末に導入できそうな技術が集積している地域があれば,我々はその地域に開発拠点を設置する。そして我々の技術者を送り込み,同時に現地の技術者も採用する。例えば日本の開発拠点では,日本が世界に先行しているマルチメディア技術を開発している。

 最近では,中国やインドには有能な技術者が企業や大学に数多く育っている。我々は,現地の技術者を活用するため,これらの地域にも研究開発拠点を設立した。

——現在,Ojanpera氏が興味を持っている研究開発のテーマを教えてほしい。

Ojanpera氏 現在興味があるのは,インターネット上の仮想世界と現実の世界とを,携帯端末上でどう融合させるかというテーマだ。例えば,仮想世界のコミュニティの中で楽しむことを目的にした携帯端末を開発してみたい。