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Tzero社のUWB向けチップセットを実装したminiPCIカード。大きなLSIがベースバンド処理/MAC層回路LSI。左下の小さなLSIがトランシーバLSI。
Tzero社のUWB向けチップセットを実装したminiPCIカード。大きなLSIがベースバンド処理/MAC層回路LSI。左下の小さなLSIがトランシーバLSI。
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チップセットのブロック図
チップセットのブロック図
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WiMedia Allianceの仕様のうち,IP(internet protocol)を用いる通信仕様「WiNET」に準拠する。
WiMedia Allianceの仕様のうち,IP(internet protocol)を用いる通信仕様「WiNET」に準拠する。
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今回のチップセット向けに日本のアンテナ・メーカーが開発したUWB MIMO用のアンテナ
今回のチップセット向けに日本のアンテナ・メーカーが開発したUWB MIMO用のアンテナ
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Tzero社のPresident兼CEOであるMike Gulett氏(左)と,創業者でCTOのRajeev Krishunamoorthy氏。
Tzero社のPresident兼CEOであるMike Gulett氏(左)と,創業者でCTOのRajeev Krishunamoorthy氏。
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 米Tzero Technologies,Inc.は,広帯域無線伝送技術のUWB(ultra wideband)の仕様を実装した家電製品向けのトランシーバLSIと,ベースバンド処理およびMAC層回路LSIから成るチップセットを開発したと発表した。日本のアンテナ・メーカーと開発したマルチ・アンテナを利用して,7~8m離れた機器間での映像伝送のデモンストレーションも披露した。

 同社のチップセットは,業界団体のWiMedia Allianceが推進するUWBの規格の一つでネットワーク通信技術にTCP/IPを利用する「WiNET(WiMedia Network)」に準拠する。空間多重技術の「MIMO(multi input multi output)」を実装するなどして接続の安定性や信頼性向上を図ったのが特徴である。2006年7月に量産を開始する。単価は,1万個購入時に20米ドル。日本では加賀電子が代理店となる。「日本の大手家電メーカーのDVDレコーダや薄型テレビ,セットトップ・ボックスへの組み込みを狙っている」(同社)という。

 チップセットのうち,RF回路LSIは0.18μmルールのCMOS技術で製造したもので,パッケージの面積は約7mm角。ベースバンド処理およびMAC層回路LSIには,0.13μmルールのCMOS技術を用いており,パッケージは約25mm角である。miniPCIカード上にチップセットを実装したリファレンス・デザインも用意する。

パケット誤り率は従来の無線伝送規格の1000万倍も低い

 Tzero社は,今回のチップセットに「UltraMIMO」と呼ぶ2×2のMIMO技術を実装し,10-8以下のパケット誤り率(PER)を実現したという。「これは,MPEGパケットの伝送誤りが2時間に1個以下という基準で,PERが8%以下という無線LANやWiMedia Allianceの規格上の要件よりも1000万倍も厳しい」(同社)と説明する。

 この厳しい基準は,安定的なHDTV信号の伝送に必要な要件として日本のメーカーを含む大手家電メーカー15社が,2003年にUWBの標準化を図っていたIEEE802.15.3a作業部会に提出したもの。「こうした厳しい基準を満たそうと正面から開発を続けてきたのは我々だけ」(Tzero社)と自信を示す。

 具体的な伝送性能は,壁越しの「見通しなし」の場合でも伝送速度480Mビット/秒を維持したまま5m以上の通信が可能であるという。106.7Mビット/秒でよければ,壁越しで20m以上届く。一方,WiMedia規格では480Mビット/秒を実現できるのは見通しがある場合に限られ,しかも通信可能距離は最大2mと短い。106.7Mビット/秒でも見通しがある場合で10mが限界であるという。

 同社は,規格上は300Mビット/秒や600Mビット/秒の伝送速度を規定する見込みのIEEE802.11nの仕様との比較にも言及した。「IEEE802.11nは,2.4GHz帯でしかも1チャネル20MHzあるいは40MHzといった狭帯域のチャネルを利用する。これでは,規格上の伝送速度は,たとえ実現したとしても数秒程度しか続かない。一般のデータ伝送用にはそれで十分かもしれない。しかし,HDTV信号を1~2時間伝送し続けるといった利用法では,高いパケット誤り率のために再送を繰り返すなどして実質的な伝送速度は数十Mビット/秒にまで低下する。しかも,300Mビット/秒を実現するには40MHzの帯域を使う必要があるが,2.4GHz帯では1チャネル分しか確保できない」(同社President &CEOのMike Gulett氏)と主張する。

三つの信号処理技術で実現

 Tzero社は,非常に低いパケット誤り率を実現できた最大の背景として,UWB技術では1チャネル500MHzという非常に広い帯域を利用できることを上げた。その上でTzero社が開発した三つの信号処理技術が大きな役割を果たしたと説明する。

 三つの信号処理技術とは,(1)誤り訂正の復号化技術,(2)波形等化技術,(3)MIMOのチャネル推定技術,である。「通信の仕様は,WiMediaの標準仕様にしたがったため,LDPC符号など特別な誤り訂正技術は利用していない。ただし,復号処理に関しては独自の実装でLDPC符号に似た処理を実現した。また,MIMOでは,最大比合成(MRC)の一種を用いた。これは,伝送速度を上げるためではなく接続の安定性や信頼性を高めるために利用する。この技術で,独自のチャネル推定技術が重要だった」(同社の創業者でCTOのRajeev Krishnamoorthy氏)。

「日本の規制の-70dBm以下でも高速伝送可能」

 Tzero社は,日本のUWBに関する厳しい出力規制についても「ほとんど障害にならない」(同社のKrishnamoorthy氏)と断言した。「米国が3.1GHzから利用できるのに対し,日本は3.4GHzからとなる。このため,米国で3GHz~5GHzの間で3チャネル利用できる通信チャネルが日本では2チャネルに減ってしまう。しかし,各チャネル自体は米国と同じように利用できる。非常に低いパケット誤り率を実現する我々の技術では,DAA(干渉回避技術)がない場合の-70dBm/MHz以下という出力規制を守りながら高い伝送速度を実現できる。もちろんDAAにも対応するが,これは総務省が仕様を決めてからソフトウエアで実現する」(同氏)。

 今回のチップセットの消費電力は約3W。「今回は,主に据置型の家電を想定したため,消費電力にはあまり気を配らなかった」という。ただし,同社は2007年には,トランシーバLSIとベースバンド処理/MAC層回路LSIを1チップにし,消費電力を大幅に削減する計画。米Apple Computer,Inc.のマルチメディア・プレーヤ「iPod」など,電池駆動の端末への搭載が狙いだという。