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右端の青い箱がUWB伝送システム。将来はテレビに内蔵することを想定する
右端の青い箱がUWB伝送システム。将来はテレビに内蔵することを想定する
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システムの前で手を振ったりして電波環境を変動させても,画像が乱れることは無かった。
システムの前で手を振ったりして電波環境を変動させても,画像が乱れることは無かった。
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システムではアンテナを3本使う。アンテナの形状は利用する機器によって変更できるという
システムではアンテナを3本使う。アンテナの形状は利用する機器によって変更できるという
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送受信チップセットを実装したカード。中央下がベースバンド処理LSIで,中央がRFトランシーバIC。RFのICには4系統の入出力パスが出ており,それが3つのアンテナ端子に接続されている
送受信チップセットを実装したカード。中央下がベースバンド処理LSIで,中央がRFトランシーバIC。RFのICには4系統の入出力パスが出ており,それが3つのアンテナ端子に接続されている
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 米Sigma Designs,Inc.は,UWB技術を使ったHDTVの無線伝送システムを開発,CEATEC JAPAN会場近くのホテルで動作を実演した。送信システムと受信システムの間に,扉や人間などの遮蔽物が多数ある状況でも,HDTVの映像信号を乱れ少なく伝送して薄型テレビに表示させた。伝送速度は実行レートで100Mビット/秒以上確保するという。家庭のセットトップ・ボックスで受信したHDTVコンテンツを,テレビやパソコンに無線で配信する用途に向ける。

3本のアンテナを受信に使う


 実演では,セットトップ・ボックスのHDDに格納したHDTV(1080i)の動画コンテンツ(MPEG-2で圧縮。符号化データ速度は約20Mビット/秒)を,今回のシステムを使ってストリーミング伝送し,薄型テレビで表示した。送信システムを格納した棚の扉を閉めても,映像の再生を途切れなく行った。実行レートで100Mビット/秒を確保しているため,MPEG-2で圧縮したHDTV映像なら最大5本程度同時にやりとりできるという。実演における伝送距離は7mほどだが,能力的には10m以上でも接続可能としている。

 Sigma社の無線伝送システムは,受信時に3本のアンテナを使う点に特徴がある。複数のアンテナでデータを同時に受信し,デジタル信号処理によって合成することで,伝送時の誤りを補正する。これによってロバスト性を高めることで,伝送距離の伸張と伝播環境変動への耐性を得るというコンセプトである。複数のアンテナを使って受信特性を高めるMIMO(multi input multi output)技術の一種であるが,Sigma社の場合は送信側は1系統なので,「MISO(multi input single output)ということになる」(Sigma Designs社)という。

 UWBの送受信チップセットは,RFトランシーバIC「B7CW101」と,32ビットのマイコンを備えるベースバンド処理LSI「B7CW201」の2チップ構成である。3本のアンテナで受信した信号の補正処理などを,ベースバンド処理LSIで行う。RFトランシーバLSIには,送信側1系統および受信側3系統に対応した入出力パスが設けられている。これらのチップはSigma社が2005年7月に買収した,米Blue7 Communications,Inc.の技術をベースにしている(Tech-On!の関連記事)。

WiNETに脚光


 物理層およびMAC層の伝送プロトコルは,業界団体WiMediaの仕様に準拠しており,マルチバンドOFDM技術を使ってデータを送受信する。上位のプロトコルには,Wireless USBではなくTCP/IP利用のWiNET(WiMedia Network)を使った。「Wireless USBは映像伝送時のQoSの仕組みが十分ではないと考えている。WiNETに独自のQoSを組み合わせる手法が,今は最適と考えている」(Sigma Designs社)という。なお同様にHDTVの無線伝送を標榜する米Tzero Technologies,Inc.のソリューションもWiNETを使っている(Tech-On!の関連記事)。

 Sigma社はHDTV映像の復号化LSIなどで注目されており,最近ではBlu-ray Discプレーヤなどにも製品が採用されている(Tech-On!の関連記事)。現在は,光ファイバ回線によるIP網経由でHDTVコンテンツをテレビ向けに配信する,いわゆるIPTVサービスのセットトップ・ボックスの参照デザインに力を入れている。今回のUWBチップセットは,こうしたIPセットトップ・ボックスでの利用を強く意識したものだ。「国内メーカーからも,こうした用途での引き合いが強い」(Sigma Designs社)。同社はUWBチップセットを2007年3月末から量産出荷する予定だが,その採用先は日本のAV機器メーカーだという。同社の送受信回路を内蔵したIPセットトップ・ボックスもしくはテレビになりそうだ。当初利用するのは,3.4GHz~4.8GHz程度のいわゆる低域バンドとなる。「日本で利用できる帯域を使った場合でも,最大200Mビット/秒のデータ伝送速度を実現できる予定」(Sigma Designs社)という。