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 富士キメラ総研が,「カード市場マーケティング要覧 2006年版」をまとめた。これによると,2005年の国内ICカード市場は,数量で前年比38.6%増の1億1500万枚,金額で同35.9%増の591億円となった。一方,国内無線タグ(RFIDタグ)市場は,数量で前年比17.3%増の4048万枚,金額で同3.3%増の63億円となった。2006年は,ICカード市場が数量で前年比29.6%増の1億4900万枚,金額で同20.3%増の711億円,無線タグ市場が数量で同13.4%増の4589万枚,金額で同6.4%増の67億500万円になると見込んでいる。

ICカード市場の成長は鈍化する


 2005年の国内ICカード市場の数量内訳は,接触式9000万枚,非接触式2500万枚としている。接触式は,金融系のサービスで用いられる割合が高く,クレジット・カードのほか,キャッシュ・カードでの採用も本格化してきている。非接触式は主にアミューズメント,交通,電子マネーなどで用いられているが,特に電子マネーを含む少額決済用途で大きな動きがみられる。

 非接触IC決済サービスは,プリペイドの電子マネーによるものと,ポストペイのクレジット・カードなどによるものの二つに大別される。媒体はいずれもカードまたは携帯電話である。プリペイド・サービスでは,電子マネーの草分け的存在である「Edy」が,「おサイフケータイ」のサービス開始以降,発行数の増加に弾みをつけているという。今後も,郵便貯金のキャッシュ・カードへの搭載や,インテル,マイクロソフトとの共同プロジェクトなど,拡大する要素があるとみている。また,2004年3月に開始された「Suica電子マネー」の普及も驚異的で,次は街中での浸透を図るために,クレジット・カードとの共用端末設置が進められているという。2007年以降も新ブランドが続々と登場する予定で,導入店舗の拡大,ポストペイ・サービスも含めた端末の共用化が加速するとみられる。ポストペイ・サービスでは,クレジット・カードによるサービスが続々と開始されている。こうしたなか,おサイフケータイによるクレジット決済が拡大すると予測している。

 しかし,“人が持つ”ICカードの市場拡大は,今後,鈍化していく見通し。現状は,非接触IC決済サービスは乱立状態であり,複合化されていくことも考えられる。加えて,国内の人口増加は頭打ちである。以上をふまえ,国内ICカード市場は,2007年が数量で前年比22.5%増の1億8250万枚,金額で同15.6%増の822億円,2008年が数量で同16.2%増の2億1200万枚,金額で同8.3%増の890億円,2009年が数量で同11.8%増の2億3700万枚,金額で5.1%増の935億円,2010年が数量で5.5%増の2億5000万枚,金額は横ばいと,年々,成長率は低下すると想定している。

2007年にUHF帯ブレイク


 これに対し,国内無線タグ市場は,急速に浸透,拡大しつつあると分析する。2005年の伸長要因として,三越が在庫管理システムを本格稼働させたことや,「2005年日本国際博覧会(愛・地球博)」の入場券に採用されたことで約1000万枚の特需があったことなどを挙げた。しかし,現行の120~150kHz,400~530kHz,アクティブ型の2.45GHz(マイクロ波)帯では,市場がすでに成熟しており,新たな需要も開拓されていないことから,2006年の国内無線タグ市場は微増もしくは減少するとみている。その一方で,2005年4月に使用を許可されたUHF帯には,大きな期待をかける。現在は実験段階だが,2007年以降,一気に市場が立ち上がり,2010年には牽引役になると予想している。

こうした見方から,国内無線タグ市場には,数量で倍々ペースに近い拡大を期待した。2007年は前年比81.7%増8338万枚,2008年は同82.8%増の1億5238万枚となり,2009年には同78.1%増の2億7142万枚で,ICカードの数量を抜くと見込む。さらに,続く2010年には前年比82.2%増の4億9447万枚と急伸し,数量ベースではICカードの2倍近い規模に成長すると予想。“モノに付く”無線タグに大きな可能性をみている。
ただし,その実用要件上,金額では数量に比例した急拡大は見込めない。国内無線タグ市場の金額は,2007年が前年比24.2%増の83億3000万円,2008年が同34.0%増の111億6000万円,2009年が同33.3%増の148億8000万円,2010年が同41.6%増の210億8000万円と予測した。堅調に推移するものの,金額規模ではICカードの1/4に満たないこととなる。