ドイツ,ランクセス(LANXESS)社は,バイオディーゼル燃料の製造過程を大幅に簡略化できるイオン交換樹脂「レバチット(Lewatit)K2567」を発表した。レバチットは,再生できる原料から製造された樹脂。未精製のバイオディーゼル燃料に含まれる塩分や,灰分,グリセリン化合物など,エンジンを傷める成分を除去する。
バイオディーゼル燃料を自動車に使うことが認められると,欧州規格EN14214によってその品質を保証することになる。EN14214は,バイオディーゼル燃料に含有する腐食性の水や,エンジンに付着する可能性のある塩分と灰分の含有量を微量にするよう規定しているほか,合金を腐食させる性質のある遊離グリセリンの含有量を最小量に規定している。
遊離グリセリンは,バイオディーゼル燃料を製造する過程で,未精製のバイオディーゼル(脂肪酸メチルエステル)を抽出するためのエステル交換反応によって発生する副産物。バイオディーゼル燃料の原料である植物油の多くは,エステル交換時に発生するグリセリンの化合物が含まれており,この遊離グリセリンを最小量におさえることは,バイオディーゼル燃料を製造する上での大きな課題となっている。
従来の技術では,この遊離グリセリンの分離工程は困難な上,有機汚染された廃水が発生するという問題があった。しかし,酸性イオン交換樹脂のレバチットK2567は含有成分であるスルホンアンカー基のナトリウム型が,グリセリンとほかの不純物に効率的に吸着するため,遊離グリセリンの分離を簡略化できるようになった。
工程としては,最初に脂肪酸メチルエステルを低粘度メチルエステルに変換する。この過程で,大半のグリセリンを物理的に分離する。次に,30℃から40℃に調整されたイオン交換カラムで精密洗浄する。
イオン交換器の処理能力は,通常,樹脂量2m3から3m3で約1時間あたり4m3。イオン交換カラム処理前は,未精製のメチルエステルのグリセリン含有量は約500ppmだが,イオン交換カラム処理後は,10ppm以下,総質量の0.001%にまで減少する。これは,欧州規格EN14214で定められた数値の200ppmをはるかに下回る。また,灰分とアルカリ性度は,異なるイオン交換器グレード(レバチットCNP80)を使うことによって除去する。
1LのレバチットK2567は約180gのグリセリンを除去する処理能力を持っている。2m3の樹脂層は,再生せずに約700m3のバイオディーゼル燃料を処理することができる。また,このイオン交換器には,従来の方法に比べて廃水を排出しないという利点もある。
イオン交換樹脂は,通常の環境で使用する場合,1週間に1度程度の頻度で再生が必要だが,再生は2ベッドボリュームのメタノールでイオン交換カラムを約1時間洗い流すだけの簡単な作業で済む。再生後は,すぐに処理を再開することができる。
ランクセスは,化学会社バイエルの化学品事業とポリマー事業の一部を母体に,2004年に設立した大手化学会社。高品質の化学品,合成ゴム,プラスチックを製造する。全世界の従業員数は約1万7200人で,2005年の総売上は約72億ユーロ。