PR


「一人負けは回避できた」と孫社長
 ソフトバンクの2006年度中間決算(2006年4月~9月)は,ボーダフォンを買収して開始した移動体通信事業の収益が同年5月より加算されたため,売上高,利益ともに過去最高となった。売上高は前年同期の2倍超となる1兆1201億7300万円,営業利益は25倍超の1125億5200万円だ。

 売上比率でおよそ1/2を占める移動体通信事業は約10%程度の営業利益率を確保した。「Yahoo!」を中心とするインターネット・カルチャー事業は約26%の増収。その他の事業の売上高は前年同期比で数パーセントの増減にとどまっており,事業は概ね好調に推移したといえる。

 第2四半期(7月~9月)の携帯電話の契約数は前年同期比2.1%増の1530万件。伸び率は鈍いが,第3世代サービス(3G)の契約比率は前年同期の11.7%に対して29.8%に拡大した。ARPU(1契約当たりの月間平均収入)は5700円。他キャリアに比べると3G比率がまだ小さいせいもあって,KDDIの6700円やNTTドコモの6720円に比べると低い値にとどまっている。

さらなる値下げの覚悟

 2006年10月24日に始まった携帯電話番号ポータビリティ(MNP)は,現在のところ,同社に追い風とはなっていない。MNPを使った転入は2006年11月7日までの累計で6万7500件,転出は9万8500件で,3万件ほど契約を減らしている。ただし,MNP以外の出入りも含めると10月の純増数は2万3800件,11月(1日~7日分)は2万8000件と純増を維持した。代表取締役社長の孫正義氏は,「MNP導入前の調査会社などの予測では,当社は契約数が激減するとされていた。予測に反して『草刈場』になることなく純増を保ったことを思えば,悪い状況ではない」とMNP導入直後の2週間を振り返った。

 孫氏は,携帯電話の契約手続きなどがシステム障害で滞った件に関して,「あくまで受付部分の不具合であって,携帯電話サービスそのものに支障はない」ことを繰り返し強調した。受付に関しては,基幹システムは当面,変更しないものの,周辺サーバを増強し,基幹システムにかかる負荷を分散することで,システムの安定化を図るという。

 「0円」広告で話題を呼んだ料金プランについて,孫氏は決算発表の記者会見では異例ともいえる数十分にわたる説明を行った。説明の終わりには,「他社のプランより必ず安くなるように設定した。もしも穴があるようなら正式に知らせてもらいたい。改定を行う覚悟がある」と述べ,今後も熾烈な価格競争に臨む姿勢を示した。