アルプス電気は,2006年度中間期(2006年4~9月)の連結決算を発表した(発表資料)。売上高は前年同期比1.2%減の3436億円,営業利益は同43.5%減の122億円と減収減益だった。米ドルなどに対する円安の効果によって売上高が136億円,営業利益が34億円押し上げられたものの,連結売上高の60%弱を占める電子部品事業の不振が響いた。同事業の連結売上高は前年同期比4.8%減の1942億円,営業利益に至っては同66.2%減の42億円と大きく落としている。そのほかの事業では,カーナビやカーAVなどの音響製品事業がそれぞれ同2.4%増の1244億円,同20.1%減の45億円,物流事業などが同12.3%増の249億円,同6.5%増の33億円だった。
販売数量減,単価下落に見舞われたHDD用ヘッド
電子部品事業の不調は,同事業を構成する磁気デバイス事業とペリフェラル事業が売上高をそれぞれ落としたことや,車載電装事業が赤字だったことなどが影響した。磁気デバイス事業は黒字を確保したものの,米Seagate Technology LLCが米Maxtor Corp.を買収したことの影響によりHDD用ヘッドの出荷量が落ちたことに加え,HDD用ヘッドの価格低下などにより,売上高は前年同期比14.9%減の331億円だった。ペリフェラル事業は,デジタル・カメラの普及に伴うプリント需要の増大で出荷が増えたフォト・プリンターが,主要取引先の在庫調整の影響を受けて出荷を落とすなどして,売上高は同29.3%減の410億円と振るわず,赤字に陥った。
車載電装事業の売上高は同14.8%増の443億円と拡大したが,同事業の20%程度を占める車載製品の製造コストがかさんだことで赤字になった。この赤字については「まったく予期していなかった。製品の信頼性を確保するために,コストがかさむ半導体などを採用せざるを得なかった」(アルプス電気)。このほか電子部品事業を構成するコンポーネント事業の売上高は同16.8%増の465億円で黒字,情報通信事業の売上高は同2.2%増の292億円とわずかに増えたが赤字だった。
通期も減収減益,ただし明るい兆しも
2006年度通期の業績については,売上高が前年比2.1%減の6950億円,営業利益が同52.6%減の215億円と減収減益になるとの見通しである。電子部品事業の不振が響くとみる。同事業の営業利益の見通しは通期で50億円であり,284億円を稼ぎ出した2005年通期に比べると1/6近い。2006年度下期は上期以上に電子部品事業が振るわず,営業利益の見込みがわずか8億円ということが効いている。同事業の不振の理由として,磁気デバイス事業と情報通信事業,ペリフェラル事業がいずれも下期に営業赤字になるとみるからだ。中でも上期は何とか黒字を確保した磁気デバイス事業は,HDDヘッドの売り上げ不振に加えてTMR素子といった次世代HDDヘッドの出荷が「当初の予定よりも四半期遅くなった」(アルプス電気)ことで,当初は310億円と見込んでいた下期の売上高が182億円にまで落ち込むと推測する。ただし,TMR素子は2006年11月に出荷を始めており,磁気デバイス事業の業績は2006年度第3四半期を底として,第4四半期には回復に向かうとする。
上期が赤字だった車載電装事業については,下期に黒字転換すると見通す。赤字の要因だった車載製品の設計を見直し,高価な部品を使わずに信頼性が確保できるようになるからである。
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