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 米国防総省の研究機関であるDARPAは,PFLOPS級のスーパーコンピュータの開発プロジェクト「High Productivity Computing Systems program(HPCS)」の第3フェーズに携わるベンダーとして,米Cray Inc.と米IBM Corp.の2社を選定した。今後,Cray社は2億5000万米ドル,IBM社は2億4400万ドルの支援をそれぞれDARPAから受け,2010年12月までにスーパーコンピュータを実際に試作してその性能などを競うことになる。

 HPCSは,単なる演算性能の高さだけでなく,従来のスーパーコンピュータの課題だった使い難さやプログラミングの難しさの解消を図り,生産性の高いシステムを開発することを目標としたプロジェクト。複数のメーカーを第1フェーズから第3フェーズの3段階にわたって審査し,ふるいにかけて最終的に1社を選定する。

 2002年に始まった第1フェーズでは,Cray社とIBM社のほかに,米Sun Microsystems, Inc.と米Silicon Graphics,Inc.,米Hewlett Packard社の計5社がそれぞれアーキテクチャを提案した。2003年7月からの第2フェーズに残ったのは,Cray社,IBM社,米Sun Microsystems社の3社。3社はDARPAからそれぞれ4310万~5330万米ドルの支援を受け,第1フェーズで提案したアーキテクチャを基に小規模なシステムを開発し,Linpackベンチマークによる演算性能の評価を受けた。この結果,Sun Microsystems社が選定レースから脱落した。

 今回,第3フェーズに残ったCray社が提案したのは「Cascade」計画。同社の本社がある米国シアトル近郊の山脈にちなんだ名前で,キーワードは「ヘテロジニアス」と「アダプティブ・コンピューティング」である。ハードウエアは,米Advanced Micro Devices,Inc.(AMD社)のマイクロプロセサを多数利用する「Cray XT3」や「同XT4」などと,2007年に開発予定のベクトル計算機「BlackWidow」を組み合わせたシステムになる見通し。OSは,アプリケーション・プログラムごとに最適な演算資源をユーザーが意識することなく適応的に割り当てることを目標にする。例えば,ベクトル計算向きの流体計算ならばBlackWidow,そうでない場合はXT4などを利用する,といった具合である。同社は,一つのプログラムの中で,特定の部分の演算だけをBlackWidowに任せるといった使い方もありえるという。

 一方,IBM社は,第2フェーズで「PERCS(productive,easy-to-use,reliable computing systems)」計画に基づくシステムを開発した。システムの概要は「Blue Geneのような独自仕様ではなく,標準的なソフトウエアが動作することをDARPAに要求された。ある意味,高速のサーバー機みたいなものといっていい」(同社)という。実際,DARPAの発表によれば,IBM社のサーバー機向けマイクロプロセサ「POWER7」と,同社のUNIX OS「AIX」を組み合わせたものになる。

演算性能は「4PFLOPS以上」が条件に

 HPCSでは「使いやすいスーパーコンピュータ」の開発を掲げるDARPAだが,今回の発表では演算性能について「4PFLOPS以上」と,従来の「PFLOPS級」より条件をやや引き上げた。米国内外の他のスーパーコンピュータ開発プロジェクトが2008年にも1~2PFLOPSを達成しそうな勢いで進んでいることを意識した模様である。