PR
講演する米UCLA教授の伊藤龍男氏
講演する米UCLA教授の伊藤龍男氏
[画像のクリックで拡大表示]
第0次の振動モードを持つCRLH型共鳴器
第0次の振動モードを持つCRLH型共鳴器
[画像のクリックで拡大表示]

 マイクロ波技術に関する国際会議「APMC 2006(Asia Pacific Microwave Conference)」が,パシフィコ横浜で開催されている(2006年12月12~15日)。13日からは,マイクロウェーブ展での製品展示も始まった。また,13日には,米UCLA教授の伊藤龍男氏がAPMCの基調講演において,マイクロ波技術のトレンドについて語った。

 伊藤氏は,司会者が講演者紹介の際に「会場の皆さんに彼が誰かを紹介する必要はまったくないと思いますが」と笑いを取るほど,マイクロ波技術で世界に名を知られた研究者である。同氏は最近,左手系メタマテリアルの技術を伝送線路の形で応用する研究を積極的に進めている。

 今回の基調講演で伊藤氏は,「マイクロ波技術は以前に比べて,より複雑になってきている」と指摘した。具体的には,「従来は各部品はそれぞれ独立に設計でき,必要な特性を持つものを組み合わせて全体の回路を構成すればよかった。ところが最近は,部品の高出力化,高集積化が進み,それぞれの素子の電磁的な効果や発熱の問題が無視できなくなって,部品を含めた回路全体を一体設計する必要に迫られるようになってきた」という。
 
 加えて,スマート・アンテナやMIMO技術などのアクティブなアンテナ技術が注目されていること,メタマテリアルの登場によって,従来になかった特性を持つ部品を作れる可能性が出てきたことについても触れた。「技術の変化は速く,今後の設計では,50Ωでの終端という従来の常識にとらわれないことも求められるだろう」(同氏)。

 注目の左手系の伝送線路については同氏の研究グループのいくつかの研究成果を紹介した。例えば「0次のCRLH(composite right/left-handed)型共鳴器は,従来になくコンパクトにできる」(同氏)という。一般に共鳴器の共振周波数は,共鳴器の物理的な寸法に左右される。ところが,CRLH型共鳴器には,第0次,つまり波長が無限大でも周波数がゼロにならない振動モードが存在する。このモードだけは共鳴器のサイズに依存しないことが知られている。

 ちなみに伝送線路型の左手系メタマテリアルは,以下のような説明となる。電気回路(分布定数回路)で電流と電圧の時間変化を追う偏微分方程式(電信方程式)を立てて,それをMaxwell方程式と比較した時,電気回路が低域通過フィルタを単位として構成されている場合は,等価的な誘電率(ε)と透磁率(μ)が共に正の値になる。一方,高域通過フィルタを単位として構成されている場合は,等価的なεとμが共に負の値になる。このため,前者のタイプの電気回路を「右手系伝送線路」,後者のタイプの電気回路を「左手系伝送線路」と呼ぶ。