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 電子部品メーカーの東光に買収話が持ち上がっている。米Bel Fuse Inc.が米国時間の2006年12月20日,東光株式の保有比率を6.02%へ引き上げ,東光の筆頭株主となった。Bel Fuse社は同日,東光の経営に関して,「半導体事業から撤退すべき」「社外取締役を導入すべき」などの意見を発表している(発表資料)

 Bel Fuse社は通信機器や家電に向けた電子部品の設計・製造・販売を行う企業で,2005年の売上高は約2億1600万米ドルだった。同社は2005年3月にDC-DCコンバータを手掛ける米Galaxy Power Inc.を,同7月には光ファイバを扱うチェコのNetwatch s.r.o.を買収するなど,電子部品メーカーとの経営統合を積極的に進めてきた。同12月,東光に対しても買収を提案したという。

 東光の2005年度(2005年4月~2006年3月)の売上高は約566億円で,Bel Fuse社の年間売上高を大きく上回っている。こうした東光にBel Fuse社が買収を持ちかけることができるのは,三角合併を想定しているからだ。

 三角合併とは,合併を仕掛ける会社の親会社が,合併される会社の株主に対して,自社の株式を交付する形で行う企業買収のことだ。買収の対価を株式でまかなえるため,買収する企業の金銭的負担が少ない。日本では1999年から株式交換による合併が国内企業同士にのみ許されている。さらに,2007年5月からは買収の対価として認められる範囲が「現金その他の財産」に広がり,合併を仕掛ける企業の親会社の株式も対価に認められることになる。このため,海外企業が日本企業を買収する際に,まず日本に100%子会社を作り,その子会社を合併の受け皿に使って,買収の対価に海外企業の株式を充てる三角合併が増えると予想されている。今回のケースでいえば,Bel Fuse社が東光を子会社化する目的で,100%子会社「ベルベンチャーズ」を設立,将来の三角合併の提案を行っているところだ。


図●三角合併の仕組み

 東光は2006年3月,Bel Fuse社の三角合併の提案を断っており,同5月には買収防衛策の導入を発表したが,Bel Fuse社はその後も東光の経営陣との面談を申し入れるなどしてアプローチを続けている。東光は「合併に応じるつもりはない」(同社広報)としており,Bel Fuse社によれば,「当社が10月と11月に出した手紙にも東光の返事はない」。業を煮やした格好のBel Fuse社は,市場内取引で東光株を買い増して発言力を強める手段に出た。市場価格の状況によっては,今後さらに持株比率を高める考えだ。

 筆頭株主の立場でBel Fuse社が公表した東光への意見には,Bel Fuse社との交渉の席につくよう要請する内容のほか,2006年度決算の予想の下方修正に対する懸念,半導体事業からの撤退の勧めなどが盛り込まれた。Bel Fuse社のCEOであるDan Bernstein氏は発表資料の中で,「東光の半導体事業の戦略は失敗だ。規模の拡大や競争力の向上,収益の改善もできないまま,非コア事業である半導体事業に莫大な経営資源を投じてきたのは誤りである。現時点での最善策はこの事業から撤退することだ」と述べている。

 東光は,2006年度通期決算の業績予想を2006年11月に修正した。売上高で前回予想を20億円(前回予想比3%減),営業利益で17億円(同57%減)下回っており,前年度の実績に比べると4%の増収ながら58%の減益になる見込みだ。同社は,開発や製造,販売に関する費用増と原材料価格の高騰,中国における最低賃金改定などを下方修正の理由に挙げている。

 半導体事業に関して東光は,「2006年度中間期(2006年4月~9月)の営業利益が期初予測の2億円に対して1億円にとどまったが,事業は概ね堅調。予想を下回ったのは,増産に向けた設備投資をしたことや開発人員を増やしたことによる費用増などのため。撤退する考えはない」(同社広報)としている。