International CESの会場には,電子機器のアクセサリー類もたくさん展示されている。中でも多くのアジア系中堅企業などがショーケースにズラリと並べて見せていて大いに目立ったのが,USBメモリである(携帯電話でハンズフリーで話すために使うBlutooth接続のヘッドセットや,iPod関連のアクセサリー製品を展示する企業も多かった)。
USBメモリは,フラッシュ・メモリの価格低下に応じて販売個数が急速に拡大していて,さらに最近では,企業が販売促進グッズとして顧客や消費者に配ったりすることも多い。少し前の「便利だがちょっと高価なメディア」という位置付けが微妙に変化し,へたをすると使い捨てもされかねないようなメディアになりつつある。そうなれば,USBメモリ・メーカーとして大切になるのは「ほかとはちょっと違う」という差異化である。目立たなければ埋もれてしまう。
各社とも筐体の形状や付加機能などを,いろいろ工夫していた。例えば台湾InnoDisk社(宣鼎國際股イ分有限公司,イ分はにんべんに分でひとつの字=以下同)が出展していた「USB Motion Drive」(図1)。USBのコネクタへの挿入部分は金属枠なしの樹脂部分だけとし,これを折り曲げて収納できるようにした。通常よりも小型にできる上,端子部分を保護するキャップがいらず,キャップを紛失することもない。2007年1月に量産に入り,同2月に販売を開始する。
端子をたたんだ状態で,本体上面にある小さな押しボタンを操作すると,1ボタンで開く折り畳み式携帯電話機のようにパカッと端子が飛び出してくる。ボタンは単に押すのではなく,押し下げながら手前にちょっと引くような操作をしないと端子が出てこないような細かい工夫が施されている。「だって,ポケットの中やカバンの中で何かがボタンに触れただけで展開しちゃったら意味がないでしょ?」(説明担当者)。
端子は,フレキシブル基板を用いて自由な角度に曲げられるが,90度と180度のところでカチッと止まるようになっている(図2)。例えばノート・パソコンの横にあるUSBコネクタに挿入したとき,メモリが横に飛び出るのがいやな場合は,90度曲げた位置で固定できる。
「写真は撮らないで」。筆者が撮影をしようとすると,説明担当者に制止された。展示会で多くの人に見せようとしているのに,なぜ写真がだめなのかと聞くと,今度は「どこから来た?」と聞かれた。日本のTech-On!という技術者向けのサイトで編集をしていると説明すると,「それならいい。どうぞどうぞ」と急に態度が軟化した。詳しく聞くと「この分野には,さまざまな角度から写真を撮ってすぐにコピー商品を作ってしまう人たちがたくさんいる」という。そのスピードたるやものすごいもので,金型をいつ作っているのかというくらいらしい。
台湾Kingmax Digital社(協泰國際股イ分有限公司)は,2006年8月に発表した時点で「世界最小」をうたう「Super Stick」シリーズを展示していた(図3)。外形寸法は34mm×12.4mm×2.2mmで,重さは3g以下である。「4Gバイト品は2007年1月に出荷を開始したばかり」(説明担当者)という。ちなみに同社は,microSDで世界初をうたうSDHC(SD 2.0仕様)対応の4Gバイト品も出展していた(ニュース・リリース)。台湾Nanya Technology社の厚さ0.11mmの基板に25μm厚まで薄くしたフラッシュ・メモリのダイを8枚積層して実装,チップは,韓国Samsung Electronics社の63nm世代のプロセスで作製した4Gビット品を用いた。コントローラには,台湾Silicon Motion Technology社の「SM268」を使った。
このほかにも,さまざまな工夫を盛り込んだUSBメモリがあった。香港Goldenmars Technology社は,電子ペーパーの方式の一種である双安定のコレステリック液晶を用いて,全容量から記録済みの容量を引いた,これから記録可能な容量を数字と円グラフで表示できるUSBメモリ「GU-F02」などを展示していた(図4)。太陽電池を備え,記録可能容量を通常の液晶パネルで表示するものも多く展示されていた(図5)。スイープ型の指紋認証装置を搭載するUSBメモリも多くの場所でみることができた。
USBメモリではあるが,SDメモリーカードとしても使える製品も展示も随所でみられた。こうした製品は,既に2005年ころから出始めているが(Tech-On!の関連記事),これまではインタフェースの変換用キャップや,機構部などを備えるものが多かった。最近ではどんどんシンプルな構造になり(図6),原価低減の波が厳しくなっているようだ。