東北大学は,小型で低価格にできるレーザ治療装置を開発した。泌尿器科における結石破砕,前立腺肥大の治療をはじめ,一般外科での組織切開などの内視鏡手術に向ける。従来こうした分野で利用していたホルミウムYAGレーザは,10~20Wの電力を必要としていたのに対し,今回の装置は「約1/5の電力で同程度の効果が得られる」(東北大学)という。電力が低減することで,装置の小型・低価格化が実現する。さらに,不要なレーザ光の照射を抑えられるため,健常な組織への影響を低減できるという利点も生まれる。
電力を低減するため,長波長のレーザ光を効率よく伝送できる中空光ファイバーと,結石や生体組織に強く吸収されるエルビウムYAGレーザを組み合わせた。エルビウムYAGレーザの波長は3μmで,ホルミウムYAGレーザの2μmより長い。
現行のホルミウムYAGレーザを利用した治療装置は大型かつ高価であり,比較的大規模な病院を中心に普及している。また,同装置で利用されている石英ガラスを主成分としたファイバーは,生体組織の切開能力が高い長波長のレーザを伝送することができなかった。今回の装置を開発した東北大学大学院工学研究科 電気・通信工学科専攻 松浦祐司助教授のグループは,今後,小型で安価なレーザ治療装置の実用化に向けて,医師および医療機器メーカーとの連携を進める。
なお,今回の研究成果は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成によるものである。